黒田総裁「株高、円安方向に力ある」 マイナス金利政策で言及

 
講演する日銀の黒田東彦総裁=7日午後、東京都千代田区

 日銀の黒田東彦総裁は7日、東京都内で講演し、2月16日に導入した「マイナス金利政策」について、金利の低下が進むことで「株高、円安の方向に力を持っている」との見解を示した。ただ、そうした効果は国際金融市場の動揺の波をかぶって見えにくくなっている。

 黒田総裁がマイナス金利政策による金利以外の相場への作用について明確に言及するのは初めて。

 この政策が持つ最大の効果は「金利全般に強い下押し圧力を加える」(黒田総裁)ことだ。全国銀行協会によると、2月末現在の民間銀行の貸出残高は、前年同月末比2.6%増の11兆9629億円で、54カ月連続のプラス。大規模緩和に支えられ、資金が市場に流れ続けている。

 ただ、こうした効果について、黒田総裁は「最近の国際金融市場の動揺が分かりにくくしている」と指摘。「世界的に投資家のリスク回避姿勢が過度に広がっている」と述べ、次第に市場は落ち着きを取り戻すとの見通しを示した。

 マイナス金利政策が始まって以降、市場金利の低下が加速している。かつてない事態に、投資家や生活者は戸惑いを隠せないでいる。

 家計や企業への影響について、黒田総裁は「プラスの効果が大きい」と強調。預金金利は低下しているものの、貸出金利や住宅ローン金利はそれ以上に下がっているため、資金流動を促す効果が得られるためだ。

 ただ、マイナス金利政策を先行導入した欧州では、「銀行の経営が圧迫され、貸し渋りや貸出金利の引き上げにつながる」との懸念も出ている。黒田総裁は邦銀の収益面が過去最高水準であることなどから、「日本では金融仲介機能が弱まることは全く考えられない」と反論した。

 また、利ざやが縮小している背景について、黒田総裁は「根本的な原因はデフレだ」と指摘した。

 マイナス金利幅をさらに拡大する可能性については「必要な場合には追加的なことを考えるが、現在の政策の下で、2017年度前半ごろに2%の物価上昇率目標に達する可能性が高い」と述べた。黒田総裁は「デフレに戻ることはない」とも強調し、2%の物価安定目標の実現に意欲を示した。

 安倍晋三首相もこの日の参院予算委員会で、「デフレからの脱却に寄与することを期待している」とエールを送った。

 ■マイナス金利政策への批判と黒田日銀総裁の反論(7日講演)

 ○マイナス金利は銀行の経営を圧迫する

 →本業の利ざやが稼げないのはデフレが原因。デフレ脱却以外に改善の道はない

 ○実質金利を引き下げても企業の投資意欲がなければ効果はない

 →この3年、貸し出しは2%台の伸び。日本の技術力、労働者の質の高さを考えれば、投資は有効

 ○世界的な株安と円高で、追加の金融緩和策は効果が帳消し

 →金利低下の効果は表れている。さらなる緩和余地ができ、資産価格にはポジティブな影響。円安、株高に向かう力がある

 ○住宅ローン金利が下がったが借り換えが目立つ

 →有利な条件で借りられる。購入契約までに一定期間はかかる