訪日客の4人に1人が中国人 バランスの取れた観光戦略が必要
高論卓説中国の新聞、新京報によると2月6日から14日までの春節休暇期間に海外に出かけた中国人は600万人に達したとのことだ。旅行先の第1位はタイの100万人、第2位は日本の36万人、以下香港、台湾、シンガポール、インドネシア、米国、マレーシア、ベトナムと続く。
また中国国家旅行局によると2015年に海外旅行をした中国人の数は1億2000万人、旅行に費やした金額は1045億ドル(約12兆円)で、単純計算すると1人当たり870ドルほどになる。中でも米国への旅行者は300万人で1人当たりの消費額が6000~7000ドルに達しており、中国人の米国人気は根強いといえそうだ。
日本政府観光局の統計によると15年に日本を訪れた外国人は1974万人で1位が中国人の499万人(前年比107%増)、2位が韓国で400万人(同45%増)、3位台湾368万人(同30%増)、4位香港152万人(同65%増)と続く。4人に1人が中国本土からの旅行者で2人に1人が中国関係ということになる。また1人当たりの旅行消費額は平均が18万円弱なのに対し、中国人は28万円強で突出している。
20年に訪日外国人旅行者を年間2000万人とする目標は、既に15年に達成したとみて、政府は訪日旅行者数の目標を引き上げる方針だ。
13年の訪日外国人旅行者数は1036万人だったが、ビザの発給条件の緩和、国際線の増便、免税対象品目の拡大、クルーズ船の寄港増加などの努力により、この2年間で2倍になった。
しかしながら、外国人観光客の増加で大都市のホテル不足が生じ国内の出張者がホテルを確保できないなどの深刻な問題も一方で生じている。訪日旅行者の数のみを追うのではなく、質的な面での受け入れ体制を改善する構想も必要だ。
春節期間だけでなく今年に入ってからも、大勢の中国人旅行者がショッピングに観光にと日本を訪れている。中国経済の減速傾向、中国株式市場の暴落、さらには元高修正などの影響により、訪日中国人の数と「爆買い」が急減するのではないかと心配された。さすがに高額商品のまとめ買いなどは減ったようだが、日用品中心にまだまだ彼らのショッピングへの情熱は続いているようだ。
中国人の春節期間中の海外旅行先ナンバーワンだったタイは、年間を通じても根強い人気を誇る。風光明媚(めいび)な環境などに人気があるようで、15年には前年比7割増の800万人ほどが訪れている。逆にこれまで上位だった香港は458万人で3%、台湾は418万人で4.9%の伸びにとどまり、韓国は598万人で2.3%の減少となっている。伸びが低調となったのは、買い物目当てのリピーター旅行客が減少したのも要因の一つではないか。
「爆買い」という言葉が表すように、中国人旅行者の訪日目的には買い物が重要な位置をしめている。ただ中国人の消費行動の変化は早いのが特徴である。
また為替レートの変動や中国側の制度変更一つで、環境が一変してしまう可能性もある。その例としてこれまで無制限だった銀聯カード(デビットカード)の海外での利用限度額が、1口座当たり年間10万元(180万円弱)に急遽(きゅうきょ)制限された。日中両国には、政治的な問題も常につきまとう。中国人旅行者の消費に過度に依存しない、バランスの取れた観光戦略が必要ではないだろうか。
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【プロフィル】森山博之
もりやま・ひろゆき 早大卒。旭化成広報室、同社北京事務所長(2007年7月~13年3月)などを経て、14年より旭リサーチセンター、遼寧中旭智業有限公司主幹研究員、57歳。大阪府出身。
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