東日本大震災6年目 被災地の職員不足解消へ正念場
視点□産経新聞社正論調査室企画委員・工藤均
東日本大震災の被災地の職員不足が解消されない。1月6日、総務省は全国の自治体に対し、職員の派遣を依頼する文書をこれまでの部長名ではなく初めて大臣名にした。背景を探ると、時の経過によって生じたいくつかの要因が見え隠れする。
震災前の2010年度当初と15年度補正後の予算額の比較のデータによると、岩手県陸前高田市は113億円から約11倍の1249億円に、宮城県気仙沼市では270億円から2197億円に(総務省まとめ)。被災地は小規模な市町村が多く、身の丈を超える巨額な予算が計上された。
14年度末までに全国の自治体から被災地に派遣された職員は延べ9万197人。15年度は1403人の要請に対し、充足数は1207人。196人足りなかった(1月1日現在)。不足人数は毎年150~200人ほど。国は全国の自治体に対し職員の派遣を要請する一方、任期付きの職員を採用、OB職員にも声をかけた。経団連などを通じて企業に働きかけ、NGOからの応援も得たが、状況は変わらなかった。
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この5年間、津波災害対策のための用地の取得や土地のかさ上げ工事などに多くの時間を費やした。復興事業はこれから本格化する。災害公営住宅などのまちづくり事業、港湾・道路などの基盤整備事業は今後、数年間がピーク。少なくとも、そこまでは支援が必要としている。
16年度も被災地からは1549人の要請があるが(15年12月3日現在)、現時点で確保できるかどうかはわからないという。6年目以降は正念場。総務相名の依頼文書はその危機感の表れでもある。総務省は「昨年夏ごろから『(確保は)大丈夫か』という声が出ていた。ある意味、先手を打ったかたちだ」(公務員課)。
一方で、足かせにもなりかねないさまざまな要因も浮上している。
全国の自治体は今、行政改革で職員の削減を進めているが、業務量自体は増している。地方創生など取り組むべき課題も多岐にわたる。全職員数が少ないとはいえ、福井の派遣は和歌山と並んで最少の4人(15年10月1日現在)。「北陸新幹線の開業や国体の準備などもあってギリギリの人数だ」(人事課)。他の自治体でも同様のケースは年々増えているという。
東京五輪の準備と本格的な復興の期間が重なったこともある。建築、土木関係の業者などは被災地への派遣より五輪関連事業を優先するケースも。競技会場を抱える自治体は職員の配置について五輪も考慮せざるを得ない。宮城県のある自治体の人事担当者はいう。「(被災地以外は)五輪に向いている感じ。優秀な人材が五輪関連の業務に回されているという話も聞く」
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支援する側にも難しい状況がある。たとえば土木技師の募集。「港湾・海岸の工事の設計、積算、管理、監督ができる人」など要請内容が具体的すぎて幅が広く、専門能力が足りないなどの理由で選考段階で落とさざるを得ないこともある。被災地の情報が減ることで、「復興は進んでいるだろう」という意識の変化が出ているように思う。取材中に「節目のときだけのイベント事のような報道」と苦言を呈された。伝える側として肝に銘じなければならない。
阪神大震災や新潟県中越沖地震などの復興計画に携わった減災・復興支援機構の木村拓郎理事長は「国が業務の進め方を見直し、手順を簡素化しないと。通常の進め方ではいくら人手があっても難しい。既存の制度に振り回されている。要は『選択と集中』。優先度が高いものを先に行うなど、整理することが重要」と指摘する。
神戸市の外郭団体で、阪神大震災からの経験・教訓を生かして研究を続ける「神戸都市問題研究所」は東日本の復興に向けた人的資源の確保に関し、(1)全国的な技術職員の確保の制度化(2)復興事業終了後に職員数を適正規模に戻す仕組みを考慮しながら、対応できる職員を国全体で増加させる制度を設計する-などを提言する。
安倍首相は10日の会見で「今後5年間を『復興・創生期間』と位置づけ、十分な財源を確保し、被災地の自立につながる支援を行う」と語った。国の積極的な指導、現実的で効率的な対応が求められている。
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