中国の繊維産業、「大国」から「強国」へ転身 生産量世界一もニーズに追い付かず

 
北京市にある大学、北京服装学院が15日に行った今年の卒業予定学生によるファッションデザイン展。中国は繊維産業の高度化を加速している段階にある(中国新聞社)

 中国の繊維産業は生産量で世界の半分を超えるものの、構造的問題による生産能力過剰やイノベーションを起こす人材の不足、厳しい資金繰りなどが成長の足かせとなっている。「繊維大国」の中国が「繊維強国」への転身を実現するにはどうすればいいのだろうか。中国国営新華社通信が伝えた。

 輸出は減少傾向

 第12次5カ年計画(2011~15年)期間中、中国の繊維産業は大きく成長、技術は進歩し、構造調整を進めた。品質、ブランド力ともに向上し、国際市場に進出したブランドもある。

 中国紡績工業連合会の高勇副会長は「繊維製品は(衣料品や日用品に加え)人々の生活のあらゆる分野に深く入り込んでいる」と説明する。

 例えば庶民の関心が高い、空気や水、油などを濾過(ろか)するフィルターも繊維製品だ。自動車や航空機、列車の軽量化にも炭素繊維複合材料が使われている。さらには人体に移植する人工血管や人工臓器までも繊維で作られる。

 データによると、繊維製品の分野別国内生産比率は14年、衣料品、ホームテキスタイル(家庭用布地製品)、産業用繊維が46.8対28.6対24.6。10年の51対29対20からの変化が見てとれる。

 高副会長は「中国の繊維産業は世界最大規模だ」と強調する。生産量は世界の半分を超え、国際市場でのシェアも3分の1を超えているからだ。

 海外の中高価格帯市場に参入したアパレルブランドも少なくない。江南布衣(JNBY)は日本やフランス、ロシアなど十数カ国・地域で38店舗をオープン。波司登(Bosideng)は8カ国に進出し、中高価格帯ブランドを扱う店など400カ所超で販売している。

 とはいえ、繊維製品の輸出は減少傾向にある。税関データによると、中国の繊維・衣料品輸出額は15年、前年比4.8%減の2911億ドル(約32兆8940億円)だ。

 背景には中国国内の労働コスト上昇や輸出相手国の通貨安などがある。昨年、円安とユーロ安が際だった日本と欧州はともに衣料品輸出の主要市場だからだ。税関データによると、15年、中国の欧州連合(EU)への繊維・衣料品輸出額は前年比9.3%減、日本へは11.6%減となった。

 しかも国内の中高価格帯市場では、消費者ニーズを満たしておらず、一部国民の間で本土以外での消費が拡大。税関データによると、中国国民の本土以外における消費は14年に1兆元(約17兆3400億円)を超え、そのうち衣料品などを含めた買い物消費が5000億元余りを占める。

 高度化実現するには

 この理由について、工業情報省の馮飛次官は「海外ブランドには認知度と影響力があり、安い製品もあるが、その品質基準は高く、消費環境が良いためだ」と説明。その上で、繊維産業が高度化を実現するためには(1)より消費者ニーズに対応し、製品を多様化して品ぞろえを拡大する(2)製品の信頼性など重要な指標を含めた品質向上を進める(3)ブランドの影響力を高め、消費者の中に認知度を浸透させる-といったことが必要だと強調する。

 そのためには技術革新が重要だが、飛躍的なイノベーションだけでなく、小さなイノベーションも必要だ。馮次官は「小さなイノベーションが品質や品ぞろえに大きな変化をもたらし、消費者の購入意欲を刺激、供給が需要を喚起することになる」との見解を示した。

 高副会長は「中国の繊維産業では現在、ハイテク製品の開発において世界の先端レベルに若干遅れている」とした上で、「第13次5カ年計画(16~20年)期間中には、科学技術の投入や高性能科学研究プロジェクト、国際ブランドの育成などを強化し、“繊維強国”に向かって努力していく」との意気込みを語った。(上海支局)