訪日客、30年に6000万人目標 政府観光戦略 地方空港・文化財を活用

 
観光地では中国、台湾などからの外国人観光客でにぎわう。一層の増加に備え、宿泊施設の整備などが課題となる=2月、東京・浅草

 政府は30日、訪日外国人旅行者数の新たな年間目標を2020年に4000万人、30年に6000万人に引き上げる観光戦略をまとめた。訪日客の旅行消費額を20年8兆円、30年15兆円とした。日本の文化財をアピール、地方空港への航空便就航を増やして訪問先を大都市以外に分散させる。訪日客需要を人口減少が進む地方の活性化につなげる姿勢を強調、東日本大震災の復興に向けた東北の観光振興も重点に掲げた。20年の目標値は現状の2倍以上で、実現には宿泊施設充実など課題が多い。

 安倍晋三首相をトップとする「観光ビジョン構想会議」で決定した。新目標は、20年時点で、来日が2回目以上の「リピーター」を2400万人(現在の約2倍)、三大都市圏以外の地方に宿泊する外国人の延べ数を7000万人(3倍弱)とした。国内旅行市場も活性化させ、日本人の消費額も維持する方針だ。

 全国200カ所に拠点

 東京や大阪など「ゴールデンルート」に偏る外国人の訪問先を地方に広げるため、神社や城郭、伝統芸能を観光資源として活用し、全国200カ所を、文化財を核とした拠点と位置付ける。多くの言語によるガイドも充実させ、地方空港の格安航空会社(LCC)の路線増も目指す。

 大都市で特に深刻になっているホテルの客室不足対策として、民泊の推進や、宿泊施設整備を対象とした容積率緩和を盛り込んだ。

 こうした野心的な目標を掲げたのは、国内総生産(GDP)600兆円を達成する原動力として、観光を日本の基幹産業へと育てるためだ。

 年間4000万人という規模は、2014年に世界5位だったイタリアと6位トルコの中間。観光庁の試算では、20年に日本が目標を達成すれば、14年の世界22位から8位へ飛躍する。

 「近隣のアジア諸国で中間所得層が拡大していることは有利に働く」。観光庁の田村明比古長官は同日、目標達成への見通しを述べた。為替レートが円高へ振れれば訪日観光にはマイナスだが、中長期的には経済発展に伴う海外旅行需要の増加が続くとの想定だ。

 国連の世界観光機関は、14年に11億3300万人だった世界の海外旅行者数が30年までに18億人に伸びると推計。その流れに加え「できることは全て行う」(安倍晋三首相)官民を挙げた取り組みで「観光先進国」を目指す。

 民泊ルール見通せず

 政府の観光ビジョンは、観光資源の魅力アップ▽旅行者の快適性向上▽観光の基幹産業化-が3本柱。

 このうち観光の基幹産業化では、入国ビザが必要な中国、ベトナムなど5カ国に対するビザ免除などを検討。日本観光をサポートする通訳案内士の資格制度も緩和し、人材を増やす。逆に、割高な土産物店に旅行客を案内してリベートを取るような悪質な旅行仲介業者を排除するため、新たに登録制度を導入するなど行政の監督下に置く。

 一連の制度改革で着地点が見通せないのは、一般住宅に有料で旅行客を泊める「民泊」のルール作りだ。ホテル不足は深刻で、民泊の普及は喫緊の課題。だが、各分野の政策メニューを並べた同ビジョンも、民泊に関しては厚生労働省と観光庁の検討会で上がった論点の列記にとどめている。

 無届けのヤミ民泊が横行すれば、近隣トラブルの一層の増加や旅行客の安全確保の面で懸念が増す。ただ、十分に規制緩和できずに民泊の普及が滞れば、目標達成はままならず、難しい対応が迫られる。