リニア新幹線なしでは関西は飛躍できない? 東京頼み脱却へ発想の転換
リニア中央新幹線の東京-大阪全線同時開業の実現にタイムリミットが近づくなか、関西政財界に「東京頼み」からの脱却を求める声が上がり始めた。「東京のぶら下がり地域になってはいけない」との警鐘で、むしろ、既存の関西国際空港を活用すべきという提言だ。現時点では少数派かもしれないが、日本第2の都市ではなく、個性的な世界都市を目指すことが重要とする見解は大阪の戦略を考えるヒントになりそうだ。(中山玲子)
「リニアがなければ関西は浮上しないという考えから決別することが大切だ」
2月5日、京都市左京区の国立京都国際会館で開かれた関西財界セミナーで、日本総合研究所関西経済研究センターの広瀬茂夫所長は、こう力を込めた。
確かに、リニアの大阪延伸が実現すれば、東京、名古屋、大阪の3大都市が約1時間圏内に入る世界最大のスーパーメガリージョン(超巨大都市圏)が形成されると期待される。
ただ、広瀬氏は「東京からみれば大阪という新しい区ができるようなもの」と訴え、東京の経済圏から関西が自立し、独自の競争戦略をもつ必要性を説く。
加えて、建設費を全額負担するJR東海は財務の健全性を確保しながら2段階で整備する方針で、リニアの大阪延伸は、すでに着工している東京-名古屋間の開業から18年遅れの2045(平成57)年に計画されている。大阪延伸が遅れた分だけ関西の地盤沈下が加速すると懸念がある。
もちろん関西財界は政府などに東京-大阪全線の同時開業を求めているが、建設費を全額負担するJR東海に対する発言力は弱いのが実情だ。必要な工事期間などを逆算すると、来年度中に大阪延伸区間の環境アセスメントに着手しておかないと全線同時開業は間に合わないとみられている。
これに対し関西が東京に依存することなく自立的に成長するため広瀬氏が「リニアにも増して重要」と位置付けるのが既にある交通インフラの関空だ。
関空は、アジアからの訪日外国人(インバウンド)が増加した影響で昨年の年間発着回数が開港以来初めて16万回を突破した。
大阪(伊丹)空港の約14万回と合わせると30万回程度となっている。それでも、40万回を超える北京首都空港など海外の主要空港には差をつけられている。裏を返せば、アジアの空港との比較で関空の伸びしろは大きいのだ。
格安航空会社(LCC)の就航が相次ぐ関空は、首都圏の空港と比べて飛行時間で1時間分ほど西にある強みを生かせる。座席が比較的狭いLCCの標準的な飛行時間は4時間程度までといわれるなか、成田空港は飛行4時間の地点は北京や台湾までとなる。これに対し関空は1時間のアドバンテージで香港やマニラなどの都市まで就航地点を広げることができ、より広い範囲のアジアからインバウンドを呼び込むことができる。
一方、広瀬氏は、複数の地方都市が存在感を示している米国の事例に注目。IT産業の集積地であるシリコンバレーにあるサンノゼや航空宇宙産業が盛んなヒューストンといった地方都市の平均所得水準が米国最大の都市、ニューヨークを上回っているとして「次世代産業を育ててきた都市の成長が著しい」と分析している。
ひるがえって、日本では「東京が一番」という構図の中で「大阪が東京のおこぼれにあずかっている」と指摘する。日本でも地方で生産性を高めれば競争力のある都市になれるとする。
東京への本社移転などで地盤沈下が続く関西経済。リニアの大阪延伸は関西に経済効果をもたらすかもしれないが、全面開業が遅れて東京との距離が離れることを嘆くのではなく、自立的な都市戦略は描けないだろうか。
創薬や医療など世界的な先端技術を持つ分野やモノづくり中小企業の集積など関西の強みを生かした個性的な街づくりに成功したときには、東京との距離感は気にならなくなっているかもしれない。