思惑交錯、円さらに高騰も 一時110円台前半、東京株は1万6000円割れ
5日の東京株式市場は、外国為替市場での急激な円高進行を受けて企業業績の先行きへの懸念が強まり、ほぼ全面安となった。日経平均株価は6営業日連続で下落し、節目となる1万6000円を割り込み、約2カ月ぶりの安値で取引を終えた。円相場は一時、約1年5カ月ぶりの円高水準となる1ドル=110円台前半まで急伸。円相場は、日銀が追加金融緩和を決めた2014年10月31日当時の水準に戻った。平均株価の下げ幅は一時400円を超えた。
政府、日銀は5日、金融資本市場について意見交換する会合を開き、円高・株安を牽制(けんせい)。菅義偉官房長官も会見で「為替市場の動きを関心を持って注視していく」と強調した。
外国為替市場では原油先物相場の下落や米株安によって投資家のリスク回避姿勢が強まり、比較的安全な資産とされる円が買われた。
4日のニューヨーク原油先物相場は、世界的な供給過剰状態への懸念から、指標の米国産標準油種(WTI)5月渡しが前週末比1.09ドル安の1バレル=35.70ドルと約1カ月ぶりの安値水準をつけた。
外国為替市場で円高ドル安が急速に進んだのは、米国の早期追加利上げ観測の後退や原油先物相場の下落、投機筋の動きなど、複合的な要因が背景となっている。市場関係者の間では、もし1ドル=110円を割り込めば、次は1ドル=105~106円近辺まで円高が進むとの見方がある。
イエレン発言と原油
根強い円高基調のきっかけの一つは、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長が3月29日の講演で「金融政策の正常化は用心深く進めるのが適切だ」と述べ、追加利上げに慎重な姿勢を示したことだ。本来ならドル高要因となる追加利上げを急がない議長の考えが明らかになり、緩和的な金融政策が続くとの見方から、ドルを売って円を買う動きが広がった。
その後、米国で今月1日に発表された3月の雇用統計や3月の製造業景況指数といった重要な指標は総じて堅調な内容だった。しかし、「イエレン議長の発言が重しとなった」(銀行系証券)ことで、発表後はむしろ円高ドル安に振れた。
最近、原油先物相場が軟調になっていることも、投資家のリスク回避を通じて円高を後押ししている。
主要産油国は今月17日、原油価格の下支えに向けカタールで会合を開く。増産凍結への期待から、2月に1バレル=30ドル台を割り込んでいたWTIは、3月中旬に一時40ドル台に回復した。
だが、経済制裁を解除されたイランは増産凍結に加わらない意向だ。これに対しサウジアラビアのムハンマド副皇太子が今月1日、イランが増産凍結に加わらない場合はサウジも参加しない考えを示した。会合で何も合意できなければ「WTIは再び30ドル台を割り込む」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミスト)との声が多い。
流れ乗る投機筋
原油安が進めば、米国のエネルギー関連企業の業績悪化や産油国の財政赤字拡大といった懸念が再び強まる。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは「世界的な株安への不安から、(比較的安全な資産とされる)円が買われた」と語る。
海外のヘッジファンドなどの投機筋が、節目となる1ドル=110円割れを試しにいったとの指摘もある。5日の外国為替市場では、3月17日につけた直近の円の対ドルでの高値である1ドル=110円67銭を突破したあたりから、円高ドル安の流れに勢いが増した。
みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは「約1年5カ月ぶりの円高ドル安水準を攻めることで相場に新たなトレンドが生まれる。投機筋がそうした流れに乗ろうとしたのではないか」との見方を示す。
1ドル=110円の大台を割り込めば次の照準はどこになるのか。みずほ証券の鈴木氏は「1ドル=110円割れが何日か続けば、1ドル=105~106円近辺を目指す流れになる」と指摘。三井住友アセットマネジメントの市川氏も「過去の値動きを参考にすれば、1ドル=106円台半ばまで円高ドル安が進む可能性がある」と話した。(森田晶宏)
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