衝撃の告白映像、英MI6のキム・フィルビー 悪名高い二重スパイ

 
キム・フィルビー(AP)

 【ロンドン=岡部伸】英国秘密情報部(SIS、通称MI6)で最高幹部に上り詰めた対ソ諜報(ちょうほう)の責任者でありながら、ソ連に機密情報を流し続けた悪名高い二重スパイ、キム・フィルビー。彼が東独の情報機関、シュタージのメンバーを前に行った講演の秘蔵映像を英BBC放送が入手して放映した。背信行為の詳細な告白は、ソ連の対英スパイ網がいかに長期的視野に立って周到に構築されたかを改めて示している。

 映像はBBCがベルリンのシュタージ公文書館で発掘した。ケンブリッジ大在学中の1930年代に共産党員となったフィルビーが63年にソ連に亡命するまでの半生を語る内容で、講演は81年に行われたという。

 「わが同士諸君」と呼びかけるフィルビーは、「30年間敵陣営にいた」と自信満々の様子で、MI6について「東側(共産主義諸国)が想像するほど能力が高くなく、危険な組織ではなかった」と語った。

 文書を保管する係官を週に2、3度連れ出して酒を飲み、仲良くなれば、自分の仕事とは無関係の機密文書も手に入ったとし、「規律は厳格ではなかった」とMI6を批判した。

 その後は毎晩、多くの機密文書を持ち出してソ連の担当官に渡した。それを担当官が写真に収め、翌朝にはフィルビーが元の場所に戻した。これを定期的に何年も続けたと打ち明けた。

 BBCは、確たる職にも就かず将来の展望もない時点で、ソ連の情報機関がフィルビーに接触したと指摘。この点について彼は講演で、「長期間に及ぶプロジェクトだった。早く結果を出すことは期待されていなかった」と述べている。

 MI6で出世できた一因として、ソ連側の要請で「汚い手を使って自分の上司を排除した」と明かした。また、英国の上流階級出身だったことが二重スパイという正体を30年間、隠し通すのに役だったとし、「(尋問などで)殴られたりした後で、(スパイではないと)間違いが判明すれば、治安当局のとてつもないスキャンダルに発展したからだ」と述べた。

 このほか、尋問で自白を強要されても「決して自白しないことだ」と強調している。

 フィルビーは英国の上流階級出身者からなるソ連のスパイ網「ケンブリッジ・ファイブ」の1人。講演の7年後、88年にモスクワで心不全で死亡した。