G20、課税逃れを不公平と批判 サミットで議題に
米ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議では、課税逃れ行為の拡大を防ぐため、各国が連携することで合意しました。
Q 課税逃れとは
A 世界規模で事業を展開する企業(多国籍企業)や富裕層などが、国をまたいだ複雑な取引を通じて納税額を少なくする行為を指します。税金を課さないか税率が極めて低いタックスヘイブン(租税回避地)と呼ばれる国・地域に会社を設立し、資産や利益を移す方法が代表的です。
Q 違法なのですか
A 一般的に租税回避地の活用自体は違法ではありませんが、課税逃れにより各国で巨額の税収が失われており、税負担面で不公平だとする批判も強まっています。
Q 今回、注目が集まった理由は
A 中米パナマの法律事務所の内部書類「パナマ文書」の内容が4月にメディアで報じられ、各国の指導者やその親族らが租税回避地を利用して課税を逃れた疑惑が浮かび、一部の国でデモが起きるなど波紋が広がったためです。
Q 各国は対策を講じてこなかったのですか
A パナマなどの租税回避地は、投資家を保護するため情報開示には消極的です。ただ、犯罪に絡む資金の隠し場所になるとの指摘もあり、監視強化策が先進国主導で進められてきました。
Q 具体的には
A 先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)は2014年、外国企業などの口座名、残高などの情報を税務当局が集め、その企業がある国に伝える制度を設けました。情報に基づき適正に課税されます。約100カ国・地域で順次運用が始まる予定です。
Q G20での議論はどうなりましたか
A 租税回避地などにある法人の実質的な持ち主を特定し、各国で情報交換することで合意しました。脱税防止に協力的でない国・地域に制裁を科すことも検討します。ただ、中国やロシア、英国などはパナマ文書で首脳やその親族らの疑惑が表面化しており、合意内容がどこまで実行に移されるかは疑問が残ります。5月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でもこの問題が重要なテーマになりそうです。
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