バングラデシュ最貧困層を4.5%へ 政府、格差拡大懸念の声も成長最優先

 
首都ダッカの路上で水をくむ女性。バングラデシュ政府は、7%台の成長を目指す(AP)

 バングラデシュは、経済成長に伴って貧困層が縮小しているが、その一方で拡大する所得格差に懸念の声が上がっている。同国政府によると、現在の総人口1億5990万に対する貧困層の割合は25%で、うち11%がさらに下層に当たる最貧困層に位置する。政府は2021年までに最貧困層の割合を4.5%とする目標達成のため、経済成長を最優先させる姿勢を示した。現地紙デイリー・スターなどが報じた。

 同国に本拠を置く世界最大の非政府組織(NGO)「BRAC」の政策研究機関は、バングラデシュの所得格差について、格差の程度を示す指標で、ゼロに近いほど完全な平等に近づくジニ係数が、1984年の0.350から2010年に0.458に上昇したと指摘。経済成長の一方、地方部と都市部の両方で格差が広がっていると報告した。

 また、政府統計には人口の10%が国内不動産の3分の1を所有しているとのデータもあり、ここ10年間で平均成長率6%超を記録した経済成長の恩恵を国民の一部しか享受していないとの意見もある。専門家は、政府による計画的な人材の開発・育成を進めれば、幅広い層の所得上昇と外貨獲得につながり、所得格差の縮小が可能だと主張する。

 こうした声に対し、アブドル財務相は、最貧困層の人口比率が90年の41%から現在の11%にまで縮小しており、1桁台になるのも時間の問題だと強調。今後6年間で年7%台の成長を維持すれば4.5%の目標達成が可能だとしたうえで「所得格差は確かに拡大しているが、最貧困層は減っている。政府の経済政策が機能している証拠だ」と述べた。

 また、同相は「今後も所得格差は広がるだろう。しかし、全般的な所得増は実現できるため、社会問題に発展するまでには至らない」と述べ、貧困解消のための経済成長を最優先させるなか、一定の格差拡大はやむを得ないとの認識を示した。

 バングラデシュ統計局は、同国の今年度(2015年7月~16年6月)の経済成長率が7.1%となり、国民総所得(GNI)は23億4300万ドル(約2555億円)に達すると予想する。これに伴い、1人当たりGNIは、前年度比11.4%増の1466ドルになる見通しだ。

 同国は昨年、世界銀行が定義する低所得国から低位中所得国の仲間入りを果たし、今後は21年までに国連が定義付けた後発発展途上国から脱却することを目標に掲げている。(ニューデリー支局)