熊本城「再建に最低10年」か 高度な技術必要、財源も課題
地震で甚大な被害が出た熊本城(熊本市中央区)は、復旧に向けた本格的な対策をなかなか打てない状態が続いている。余震が収まり被害の詳細を調査できるようになっても、江戸時代に築いた石垣を積み直すには高度な技術が必要で財源確保も課題となる。専門家の多くは「再建に最低でも10年はかかる」とみており、長い道のりとなりそうだ。
「われわれ熊本県民の文化・歴史まで崩壊させてしまうような状況だ」。村田信一副知事は25日、文部科学省へ馳浩文科相を訪ねて窮状を訴えた。熊本城は年間約177万人(2015年度)が訪れる人気の城。国の重要文化財が13件あり、そのうち「東十八間櫓(やぐら)」と「北十八間櫓」は載っている石垣ごと全壊、残る長塀なども全て被害があった。天守は傾き、しゃちほこも落ちた。
文化庁担当者は「作業の安全確保が第一の問題」とした上で「櫓ならば、土石に交じっている部材を慎重に外さねばならないし、その上で石垣を組み直し櫓を復元する方法を考えなければいけない」と説明。文化財石垣保存技術協議会(兵庫県姫路市)担当者も「これまでに例のない被害だ。かなり経験を積んだ石工の技術者が必要になる」と指摘する。
東日本大震災では、福島県白河市の小峰城跡(国指定史跡)が石垣に大きな被害を受けた。今も修復は7割程度にとどまり、2018年度の完成まで約50億円の費用が見込まれる。
今回の地震で熊本市は白河市にアドバイスを求めた。「崩落した石があった場所を照合するため、できるだけ動かさず、現場を保存するように」。文化財の復元は、一つ一つの石を元の場所へ戻すのが原則。白河市は担当者が震災前の写真を見ながら位置を確認した。
熊本城の修復費用は100億円を超えるとの見方が強い。災害復旧の場合、特別史跡の石垣や、重要文化財の建造物は国の補助率がかさ上げされるが、問題は残りの財源。小峰城跡は震災の特別交付税で賄った。
熊本市の会社員水本俊一さん(71)は「鉄壁の城がこれほど崩れるとは想像もできなかった。どれだけ時間がかかっても修理して、子供たちにきれいな城を見せてあげたい」と語った。
日本財団は再建費用として30億円の提供を決めており、これを呼び水に支援の拡大も期待している。
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