週休2.5日は実現可能か? ノンフィクション作家・青樹明子

専欄

 長い間、旅行の自由が制限されていた中国の人々にとって、近年の旅行ブームは、当然の成り行きと言っていい。流行語となった「世界は広い、さあ、見に行こう!(世界那麼大、我想去看看)」というコピーの通り、休みのたびに旅行に出る。

 そんな人々に朗報なのが、昨年末から話題にのぼる「週休2.5日」の導入である。

 中国国務院は2015年8月、「週休2.5日制」を試行的に導入するよう、全国の地方自治体に呼び掛けていた。そんななか全国に先駆けて、先月1日、まずは山西省晋中市と江西省吉安市で実施されたのである。目的は、観光旅行の推進、観光関係消費の促進だった。

 その概況はこうだ。

 (1)毎月2回金曜日の午後を休業とする(2)党・政府機関と団体・事業機関で実施。社会組織・企業も導入可(3)導入機関は金曜日午後も、半分の職員は出勤するよう人員調整をする(4)国の定める労働時間確保のため、他の日に補填(ほてん)する-。

 問題はもちろん(4)だ。

 労働時間を補填、具体的には「有給休暇から差し引く」「毎週4時間以上の残業を義務化」「当直を増やす」などがあげられている。

 当然庶民の反応はイマイチだ。

 まず楽観派はこう考える。「休みが多いにこしたことはない」「週休2.5制、大賛成。仕事第一の人生なんてつまらない。しっかり休んでこそ、仕事の効率も上がる」「いっそのこと週休3日制になればいい」

 悲観派の多くは「どこにメリットがあるんだ?」と疑問を投げかける。「今だって残業が多いんだ。これ以上増やせない」「まずは週休2日を確保してほしい」「国家機関ならともかく、私企業は休みもままならない」「公立機関の場合、今でも金曜の午後は仕事にならない。将来は金曜の午前から仕事にならなくなってきそうだ」

 休みが本当に増えるのなら歓迎だが、このやり方ではかえって負担が増すのでは? というのが本音だろう。

 専門家はひと言で斬(き)る。現実味がない! と。

 「中国の経済発展は、長い休暇を確保できる水準に達していない。もし毎週、半日の休みを増やせば、年間26日の労働時間を減らすことになる。それはまったく非現実的なことだ」(中国労働学会・蘇海南副会長)

 中国経済の減速が、世界各国で話題になる昨今である。内需拡大は喫緊の課題だ。現実味があろうがなかろうが、あの手この手と試行錯誤する姿勢は、評価してもいいような気がする。