高速鉄道受注、大臣に収賄疑惑浮上

ジャカルタレター
昨年3月、来日した際に東海道新幹線に乗車したインドネシアのジョコ大統領夫妻。同国高速鉄道の受注競争で日本は中国に敗れたが、賄賂攻勢だったとの疑いが浮上している

 日本の新幹線が中国との受注合戦に敗れた出来事と深い関わりのある汚職事件のニュースが、最近、インターネットで話題となった。中国側からインドネシア国営企業相のリニ・スマルノ氏に対し多額の現金が渡ったという疑いが新たに浮上。現在、警察が調査中で、事実関係は不明だ。

 ◆政治的な思惑か

 リニ氏は、財界出身であり、メガワティ元大統領と関係が深く、2014年の大統領選挙後はジョコ政権移行チームの組閣準備などにも携わった。政財界とのパイプも太い人物だが、最近は、与党である闘争民主党とは関係が悪化しているため、政治的な思惑がこのニュースに絡んでいるかもしれない。

 しかし、もし、これが事実であるならば、日本が新幹線の受注に負けたのは、“やはり”中国からインドネシアの関係者に対する巨額の賄賂が原因だったということがはっきりする。なぜなら、リニ氏こそが、中国案採用を積極的に後押しした人物だからだ。実際、中国案が最終的に決まった際も、管轄であるはずのジョナン運輸相は、高速鉄道について手続きは協力するが、計画に絡む責任は一切持たないと発言。先の起工式の際もジョナン運輸相が欠席した。同相は、高速鉄道についてはリニ氏に聞いてほしいと言っており、中国受注の決定にリニ氏の意向が大きく反映されたことがうかがえる。

 ◆汚職撲滅の支援を

 日本のメディアでは、新幹線受注をめぐって、中国案であれば「インドネシア政府は債務保証をしなくて済む」点や、ジャワ以外の開発への期待や、スピードより安さと速さに関してなどさまざまな要因が伝えられ、反省の議論もあったが、実際は「賄賂」が決め手だったのであれば、ゆゆしき事態だ。現地メディアは、「日本案の方が実益は大きかった」との分析や「中国がつくった鉄道には乗れない」との感情的な意見まであり、日本案の再考論も浮上している。もし、リニ氏の賄賂受け取りが事実であり、そのせいだけで中国案が採用されたのであれば、決定プロセスに大きな欠陥があったということになる。

 重要なことは、このコラムでも何度も取り上げている「インドネシアの汚職撲滅」に向けた支援である。インドネシアの汚職体質が変わらない限り、今回の新幹線受注合戦で明らかなように、公正な競争にはならない。どれだけ人間関係を築き、技術力を説明しても、利益率を下げて受注を手に入れようと躍起になっても、賄賂の額で受注が決まるようでは、日本は手が出ない。決定プロセスの透明化や専門家の意見の聴取、収賄罪についての知識の共有など、日本が率先して支援することが重要である。(Serendipity Japan 堀場明子)

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 「ASEAN経済通信」

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