帰国子女を生かしてない日本企業

新興国に翔ける

 □スパイダー・イニシアティブ代表 森辺一樹

 帰国子女とは、保護者の赴任などによる日本国外での長期滞在生活を経て、学齢期に日本に帰国した人のことを指す。2014年の総務省の統計では国内に約7万7000人の帰国子女がおり、日本企業の海外進出に伴い増加傾向にある。

 帰国子女の一人である私は、この帰国子女たちこそ、日本の企業がグローバル化を進めていく上で、非常に大きな力になると思っている。帰国子女は日本企業のグローバル化を担うにふさわしい人材であるはずだ。

 しかし現実には、帰国子女が日本に帰ってきた当時は「ちょっと変わってるよね」といわれ、少なからず区別を受けることになる。すると、帰国子女の中で「変わり者」といわれたくない人は、日本の社会に合わせながらどんどん日本人化していく。それが嫌だと思う人は、帰国前の国に再び帰り、現地の社会で生きていくことを選択する。どちらのパターンも、日本企業にとってはまったく価値を生まない。

 せっかくの帰国子女としての良さが、日本人化してしまえば生きないし、国外の組織に行ってしまえば直接的には日本の企業や経済の役には立たないからだ。

 昨今、アメリカの大学を卒業した日本人も相当数いるが、帰国して日本の企業に就職せず、そのままアメリカの企業に就職する人も多い。彼らが日本に戻って就職しないのは、日本の企業や労働環境に課題があるからではないだろうか。

 日本のグローバル化が進まない原因の一つに、帰国子女を取り巻く状況にみられるように多様性を受け入れられない土壌がある。日本には「和を以て貴しとなす」や「出る杭(くい)は打たれる」といったことわざに象徴されるとおり、協調性を重んじるあまりに、自分と違う考え方や自分と違う環境で育った人を受け入れにくい風潮がある。

 アメリカにも差別は根強くあるが、多様性を受け入れているからこそ、多民族国家が成立している。欧州諸国は陸続きで、すぐ隣にフランス、オランダ、スペイン、イタリアがあるという環境の中で、当然のようにお互いを受け入れている。

 日本は今、グローバル競争の真っただ中にあり、かつての栄光は薄れつつある。日本がグローバルなステージで、次の進化を成し遂げるためには、多様性を受け入れられる国に生まれ変わる必要があるのではないだろうか。

 言語などといったテクニック以前に、土壌そのものを変えていかなければ、日本は変わることができない。

 帰国子女は日本のグローバル化を牽引(けんいん)することができる貴重な人材であり、彼らを生かすことは非常に大きなチャンスになると私は考えている。彼らを日本人化してしまう、もしくは彼らを失望させて海外の企業に就職させてしまうことは、日本にとって大きな損失だと言っても過言ではない。

 協調性を大切にすることも重要だが、それだけではなく、自分とは異なる人を受け入れられる多様性のある日本になれば、グローバル化はもっと進むし、日本の企業への就職に興味を持つ外国人も増えるのではなかろうか。(隔週掲載)

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【プロフィル】森辺一樹

 もりべ・かずき 海外販路構築のスペシャリスト。10年以上にわたり1000社以上の海外展開の支援実績を持つ。アジア新興国市場の販路構築が専門。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。“アジアで売る”ためのノウハウをネットラジオで無料配信中! www.spyderagent.com/podcast

 >>森辺氏のツイッターは @kazukimoribe