苦境の日米欧、鉄鋼ダンピングで中国牽制 対抗措置検討明記へ
26日開幕した主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、中国の過剰生産が世界に与える悪影響も議論された。とくに、鉄鋼のダンピング(不当廉売)輸出で日米欧のメーカーが苦境にあえぐ中、27日にまとめる首脳宣言では必要に応じ対抗措置を検討すると明記、生産能力拡大を補助金で支援する中国を牽制(けんせい)する。先進7カ国(G7)は経済分野でも対中包囲網を築く。
「中国はサミット参加国ではないが、『陰の主役』」
元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブ・フェローはこう語る。
鉄鋼の過剰生産の解消は進まず、欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は26日、三重県で記者会見し、「欧州で多くの雇用を犠牲にしている」と懸念を示した。中国政府は、赤字製鉄所を補助金などで支えていると指摘されており、首脳宣言は中国を名指ししないものの、「市場を歪曲(わいきょく)する支援を懸念する」と見直しを求める。
是正されない場合は、世界貿易機関(WTO)のルールにのっとり、対抗措置を発動する可能性も示す。
既に、米商務省は25日、中国で製造された鉄鋼製品が不当に安い価格で売られているとして、209.97%の反ダンピング関税を課す方針を決めた。
首脳宣言では中国をWTOの「市場経済国」と認めるかどうかの判断を見送る。中国は2001年にWTOに加盟した際、当初15年間は非市場経済国と扱われることを受け入れた。
中国は、今年末までの暫定期間が終われば自動的に「市場経済国」と扱われるべきだと主張するが、認定すれば過剰生産への対抗措置を取りにくくなる。G7は中国に改善を促すが、中国が景気下振れを恐れて構造改革をうやむやにする可能性もある。
「中国バブルの崩壊は世界経済を奈落の底にたたき落とす」
大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストはこう警告した。
一方、首脳宣言には、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の早期発効に向け、各国の国内手続き完了を後押しすると明記する。日EUの経済連携協定(EPA)、米EUの環大西洋貿易投資協定(TTIP)の早期妥結を目指す方針も確認。G7の通商戦略を加速し、巨大自由貿易協定(メガFTA)の主導権争いで中国を牽制する。(藤原章裕)
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