社民党・吉川元政審会長
2016参院選 経済政策を問う!■金融政策ではデフレ脱却できず
3年前の参院選前も本紙で、安倍晋三政権が進める「三本の矢がデフレ脱却の正しい処方箋なのかといえば、結論としてノー」だと指摘させていただいた。3年を経た現在、アベノミクスは間違いなく失敗であり、デフレ脱却には政策転換が不可欠だと断言したい。2回にわたる連載なので、今回はアベノミクスの誤り、次回は社民党が考える経済政策について述べさせていただきたい。
安倍首相は、いまでもアベノミクスの成果に言及するが、それは主として円安・株高に支えられたものだった。しかし、その「恩恵」は大手輸出企業や高額所得者に限られ、逆に3%の消費税率引き上げが実質賃金の低下を誘引した。このような状況では、各種世論調査で「アベノミクスを評価しない」という回答が過半数を上回るのも当然である。さらに、頼みの綱の円安・株高にも、陰りが見え始め、日本経済が米国、中国、あるいは欧州といった他国の経済動向に大きく左右されるという脆弱(ぜいじゃく)性も露呈した。
アベノミクスの失敗は、異次元の量的緩和というリフレ派の金融政策に疑いもなく便乗したことにある。異次元緩和の根幹をなし、年間60兆~70兆円の増加を見込んだマネタリーベースは(1)日銀券発行額(2)貨幣流通量(3)市中銀行の日銀当座預金-の3つによって構成される。異次元緩和前の2013年3月と直近の16年4月のそれぞれの数字を比較すると、(1)の日銀券発行額は82.8兆円から95.6兆円(+15%)、(2)の貨幣流通量は4.5兆円から4.7兆円(+4%)となった。市中に流通する通貨の量は、(1)と(2)の合計なので、通貨供給量は大幅に増えたわけではない。最後の(3)日銀当座預金残高だけは、47.3兆円が280.5兆円へと5.9倍も増えた。要するに、異次元緩和を行っても、市中銀行の日銀当座預金の額面を増やしただけで、生産や雇用、賃金の原資に回ったわけではないのだ。
日銀は2月から、この日銀当座預金の一部にマイナス金利を設定した。銀行が日銀当座預金を切り崩し、企業の投資などに融資するよう力ずくで求めたものだ。しかし、マイナス金利導入前の今年1月と4月の日銀当座預金残高を比較すると、プラス25兆円となり、残高は減るどころか、むしろ増え続けている。
当然のことながら、いくら銀行が融資に使えるお金を増やしたところで、企業に資金需要が発生しなければ、お金は使われることがなく、生産の拡大を通じた物価上昇もあり得ない。長期におよぶ深刻なデフレ経済からの脱却に必要だったのは、金融・通貨依存政策ではなく、需要の掘り起こしにあったのだと考える。
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6月1日は日本のこころを大切にする党を掲載します。社民党の2回目は14日掲載予定です。
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【プロフィル】吉川元
よしかわ・はじめ 社民党政審会長、副幹事長。衆院文部科学委員、総務委員。1990年、神戸大学経済学部を中退して旧日本社会党に入党。社会新報記者、衆院政策秘書などを経て2012年10月の衆院選で比例代表九州ブロックから初当選。当選2回。49歳。香川県生まれ。
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