マイナス金利、懸念広がる 金融機関、中小企業への融資抑制も
高論卓説「日本銀行が導入したマイナス金利政策は金融機関(=株主)だけに負担を求める行為。貸し出しを伸ばしお金の回転を良くし景気回復させ収益を上げる狙いは思うように行っていない。貸し出しは伸びず、個人の住宅ローンが伸びているが借り換えが中心で収益増大に結びついていない。無理に信用度の低い者に貸しても不良債権となるだけで過去の金融危機の教訓が生かされていない。銀行、生保、郵政3社の株価暴落で多くの投資家心理が冷え切って個人消費はさらに落ち込みの悪循環となっている。日銀は特定の業種に負担を求めるのではなく、別の政策をするように頭取が要望書を日銀総裁に手渡しすべきである」
一見して金融関係者の要望書のような文面だが、これはみずほフィナンシャルグループの個人株主が6月24日の株主総会に付議するよう提出した議案の一つだ。これに対する同行取締役会の意見は「日銀の政策が金融機関に与える影響は、短期的な収益面のみならず、中長期的な日本経済の活性化による収益影響等も併せて考慮すべき」として「本議案に反対」している。
しかし、金融機関の現場の反応は少し違うようだ。「われわれの本音を代弁してくれているような個人株主の意見だ」(メガバンク支店長)と好意的に受け止める声が聞かれる。それほど日銀のマイナス金利政策は金融機関を苦しめているということだろう。
その当事者の日銀内部からマイナス金利政策に反対する狼煙(のろし)が上がった。日銀の佐藤健裕審議委員は2日に釧路で開かれた金融経済懇談会で講演し、マイナス金利政策について「理論矛盾であり、持続性に欠ける」と述べたのだ。マイナス金利という一種のペナルティーを科しつつマネタリーベースの増加目標を維持する政策は、理論的に矛盾する政策というわけだ。
佐藤委員は、マイナス金利の導入に伴い利回り曲線が極端に平坦(へいたん)化し、長期ゾーンまで利回りがマイナス化することで金融機関は「限界的な資産の逆ざやリスクに直面している」と指摘した上で、「(金融機関に)潜在的な信用コストの高い貸出先への融資抑制や資金アクセスの乏しい企業への貸出金利引き上げなどの動きが広がる可能性がある」との見方を示した。マイナス金利政策の目標に反して、金融機関はバランスシートの圧縮に向かいかねないという指摘だ。
また、佐藤委員は、マイナス金利により短期金融市場の機能が低下しており、「2003年の『VaRショック』前のような危うさを感じる」とも述べている。ここで言う「VaRショック」とは、長期金利が史上最低の0.430%まで低下した後、2%近くまで急上昇した歴史的な債券暴落を指している。
住友銀行を経て、モルガン・スタンレーMUFG証券のエコノミストとして長年、債券調査に当たった佐藤氏は、金融の現場を熟知している。審議委員の一人としてあえて指摘しておかなければならないとの決意が感じられる。
佐藤委員が指摘するように、収益減に直面する金融機関は、固定金利で融資するケースが太宗を占める中小企業向け貸し出しでは優位な金利を維持しようとする一方、大企業は超低金利を利した社債発行を活発化させている。マイナス金利は大企業と中小企業の収益格差を一層、拡大させかねないと危惧される。
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【プロフィル】森岡英樹
もりおか・ひでき ジャーナリスト 早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。58歳。福岡県出身。
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