アベノミクスの「モードチェンジ」
高論卓説■金融政策手詰まり、大規模な財政出動へ
15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の終了後、外国為替市場では円高が進展した。市場の米利上げ期待は急速に後退し、ドル高円安を大きな推進力としてきたアベノミクスにも大きな影響を与える事態といえる。日本のマクロ政策は、財政出動を主体にした新しい政策体系に「変化」する可能性がある。その分水嶺(ぶんすいれい)は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ判断に注目が集まる7月に訪れるだろうと予想する。
市場が最も注目したのは、FOMCメンバーの政策金利予想を図式化した「ドットチャート」だった。前回までたった1人だった2016年中の利上げ1回に対し、今回は6人の支持が集まった。
このため市場では、7月利上げが見送られた場合、大統領選の動向や世界経済の推移次第では、16年中の利上げ回数がゼロになる可能性を意識する見方が急増した。そのことがドル高観測の後退に直結した。
3年余りのアベノミクスにおいて、大胆な金融緩和政策を市場が好感し、外為市場で円安が進展。円相場は1ドル=80円近辺から一時、124円までシフト。日経平均も1万円付近から2万0952円まで上昇した。この原動力が弱まった場合、何が起きるのか。
デフレ脱却を目指して日銀が金融緩和を展開し、その反射的効果としての円安→企業業績の向上→株高→企業・個人のマインド好転という動きがあった。これが逆回転するリスクが出てきたと指摘したい。
そこに欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う英国国民投票が、円高リスクとして注目されてきた。23日に英離脱が決まった場合、7月FOMCの結果を待たずに円高圧力が高まるのは間違いない。
7月の米利上げが先送りになった場合、さらに円高圧力が高まるだろう。そこで政府が選択するのは、円安効果のルートではなく、財政出動を大規模に展開し、国内総生産(GDP)を直接的に押し上げ、企業・個人の心理を支え、株高を演出するという政策への「モードチェンジ」だと予想する。
7月10日に投開票の参院選をターゲットにした自民党の公約から「大胆な金融緩和」という文言がなくなった。政界の内外では、さまざまな「解釈」が出ているが、「財政拡張」がニューモード・アベノミクスの主役であり、金融緩和は「いぶし銀の脇役」になることを問わず語りに語っているのではないかと考える。
とはいえ、この政策には財政出動の上限や2020年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化の現行目標との整合性が必要になる。
何の歯止めもかけないようなら、事実上の「ヘリコプターマネー」に突入しかねない。
アベノミクスのモードチェンジが水面上に浮上してきた場合、その点の明確化が何より重要であると指摘したい。
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【プロフィル】田巻一彦
たまき・かずひこ ロイターニュースエディター 慶大卒。毎日新聞経済部を経てロイター副編集長、コラムニストからニュースエディター。57歳。東京都出身。
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