高橋昭雄東大教授の農村見聞録(38)
飛び立つミャンマー■農業・農村100日計画は盛り込み過ぎ?
ティンチョー新大統領の下、4月に発足した国民民主連盟(NLD)政権は、大統領の上に立つアウンサンスーチー国家顧問の号令により、第1次100日計画の策定に忙殺されてきた。新政権は、発足前からその政策立案および実施能力に懸念が持たれてきたが、スタートダッシュでこれを払拭することが計画策定の狙いである。
この100日計画の内容が、各省庁や州・管区域政府別に、5月中旬以降、順次公表されている。
今回は、旧農業灌漑(かんがい)省、畜水産省、協同組合省の3省が合併して12の局を持つ巨大官庁になった農業・畜産・灌漑省の同計画をレビューしてみることにしよう。
◆局別に具体策提示
農業・畜産・灌漑大臣のアウントゥー博士は、国営新聞の取材に対し、同省が行うべきことは28種類ある、と答えた。その概要は、官民の人材育成、農業関係投入財に対する財政的助成、農業に関する研究開発の促進と普及、諸灌漑施設の維持と新設、家畜・家禽(かきん)の防疫、伝統的な農業・畜産技術の保護と普及、といったものである。
さらに事務次官と関係局長がより具体的に100日計画の内容を説明している。その主要項目は以下のとおりである。
【農業局関係】
・農作物の損害を最小にする。そのための研修を地域ごとに行い、土地に合う作物への切り替えを進める。
・安全無害で栄養のある作物を生産するため、違法に輸入・販売されている農薬や肥料を使用しないよう、検査と摘発を実施する。
【灌漑局関係】
・灌漑システムの近代化を実施する。南北ナウィン、ウェージー、タウンニョーなどのダムの改修を行う。
・年間発電量1億7000万キロワット時を見込めるミッターダム計画を履行する。
・ザルン郡で30万エーカー(1エーカーは約0.4ヘクタール)の洪水防止計画を実施する。
【畜産・獣医局関係】
・家畜の予防接種7331万本を1954万頭に対して執り行う。
・牛の人工授精を進め、そのための凍結精液を作る設備を充実させる。
【水産局関係】
・稚魚5807万匹の生産のために1億4972万チャット(約1347万円)を投入する。
・気候変動が水産業に害を与えないよう、(1)村で教育活動をする(2)サインボードを作る(3)メディアを通じて周知する-などの方法によって、予防措置を講ずる。100日間に9州・管区域437カ村でこれを行う。
【農村開発局関係】
・村落給水事業を584カ村で実施する。そのために26億4877万チャットを計上する。
・村人の雇用と収入増加のため、30の生計向上講座を実施する。それには、農業や畜産だけでなく、コンピューター、左官、大工、電気工、自転車修理、織布などの研修も含む。
・韓国国際協力機構(KOICA)の援助によるセマウル(新農村)運動の対象村100カ村に1カ村当たり2万ドル(約212万円)を投入する。
【農業機械化局関係】
・1766機の農機を100日以内にローンで売る。
・10エーカー以下の農民の組織に優先して591機の農機を販売する。
【農地登録局関係】
・農地登録システムの電子化を120の郡で進める。
【農業農村開発銀行関係】
・100日以内に5000億チャットの農業資金貸付金が農民の手に渡るようにし、今年度中に1兆7660億チャットを農民に融資する。
【協同組合局関係】
・中国輸出入銀行からの借款をもとに、4630億チャットを協同組合が農民に貸し付ける。
◆政策の透明化に合致
以上のように、かなり具体的なプランが策定されている。
行政を可視化し、数値を挙げて、国民が評価しやすくするという意味で、NLDが唱道する「政策の透明化」に合致するものである。
これらの数値目標が次々と実現すれば、発展間違いなしではあるが、これを100日ごとに作成し、実行し、評価することを5年間も継続していくことができるのだろうか。実行力より前に、公務員個人や組織の体力や気力が問われることになるかもしれない。
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