アベノミクス「果実」争点へ、経済政策めぐり与野党党首ら応酬
参院選参院選(7月10日投開票)の初の週末となった25日、与野党党首らは各地の街頭で支持を訴えた。英国の欧州連合(EU)離脱が決まったことが経済面での懸念材料となる中、安倍晋三首相は急激な円高・株安を押さえ込む対応を講じていると強調し、自身の経済政策「アベノミクス」への批判をかわしたい考え。一方、野党はアベノミクスの「失敗」を訴えて攻勢をかけた。
「日本は(サミット)議長国として、新たなリスクに陥ることを回避するため、あらゆる手段を取らなければならないと議長声明をまとめた。準備をすでにしていた」
首相は25日、仙台市泉区の街頭演説で、5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で、英国のEU離脱の可能性が織り込み済みだったとの認識を示した。そのうえで、市場の動向に関し「求められるのは政治の安定だ」と訴えた。
野党は、円高・株安傾向に拍車がかかれば、首相が争点と位置付けた経済政策への有権者の不安が広がるとみている。円安・株高傾向がアベノミクスへの評価を支えてきた側面があったからだ。
民進党の岡田克也代表は長崎市で記者団に「分配と成長の政策でない限り、経済成長は実現しない」と指摘。街頭演説でも「アベノミクスで格差が広がった。子供の貧困も増えた」と批判した。
共産党の小池晃書記局長は東京・八王子市で「EU離脱で株価は暴落している。アベノミクスはどこからみても破綻したことがはっきりした」と訴えた。
これに対し、首相は街頭演説で「野党に代案はない。アベノミクスをやめてしまえば(民主党政権の)暗い時代に戻ってしまう」と強調した。公明党の山口那津男代表は横浜市で「自公政権でなくては難局を乗り越えられない」と力説した。
さらに、新たな争点になりそうなのが財源問題だ。
首相や与党は、アベノミクスによる税収の上振れ分を「果実」と呼び、社会保障の充実策や1億総活躍プランに基づく保育や介護の受け皿確保の財源に充てるとしてきた。景気の下支えを図る平成28年度第2次補正予算案も編成するが、その財源もアベノミクスの「果実」が選択肢となる。
ところが、英国のEU離脱決定で円高・株安が進み、企業収益に悪影響が生じて税収が減る恐れが出てきた。8月には29年度予算案の概算要求もあるが、財源の見通しが立たなければ混乱も予想される。赤字国債の扱いも含め財源と政策遂行の優先順位が問われることになりそうだ。
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