英EU離脱に経済界困惑、戦略練り直し 経産省、トヨタなど主要企業と意見交換

 

 経済産業省は27日、英国の欧州連合(EU)離脱決定を受け、トヨタ自動車や日産自動車、日立製作所など英国進出企業の関係者を集めた官民の意見交換会を開いた。急激な円高による輸出採算の悪化や、実際に離脱した後の企業活動への影響を把握し、支援策に結びつける狙い。英国をEU市場への足がかりにしてきた日本企業は戦略の練り直しを迫られ困惑しており、政府に綿密な情報提供を求める声が上がった。

 官民で危機意識共有

 「今の段階でどんなことが起こるのか分からない」(三菱重工業の宮永俊一社長)「とりあえず状況をみないと何もできない」(丸紅の山添茂副社長)-。会合に出席した経営者らからは相次いで不安の言葉が漏れた。

 EU離脱や、世界的な金融市場の動揺が、日本企業の事業環境をどこまで悪化させるのか。「離脱の条件がまだ分かっておらず、不確実性の高いことが懸念要素。対応もこれから」(経団連の根本勝則常務理事)というのが、企業の本音だ。

 経産省はこの日、幹部を英国などに派遣して情報収集に当たる考えを表明。中小企業に対して政府系金融機関や日本貿易振興機構(ジェトロ)が相談窓口を設けるほか、大企業には経団連などの経済団体を通じて情報を提供し、不安払拭に努める考えを強調した。

 英国に進出した日本企業は1380社(帝国データバンク調べ)に上る。ヒトやモノの移動が自由で、関税がかからない欧州単一市場の利点を生かし、輸出拠点として活用してきた。

 EUからの離脱で、例えば自動車なら英国から域内への輸出に10%の関税がかかる恐れがあり、ライバルのドイツメーカーなどに比べ競争力が低下する。意見交換会後、トヨタ自動車の早川茂専務役員は「現状認識と懸念点について話した」と述べ、官民で危機意識の共有を図ったことを示唆した。

 1ドル=115円望ましい

 一方、金融市場の動揺を受けて、「まずは為替の安定化をお願いしたい」(三井物産の加藤広之副社長)と、企業では円高進行への警戒感が高まっている。

 日本商工会議所の石田徹専務理事は「中小企業が望ましい為替水準は1ドル=115円程度。明らかに行きすぎだ」と強い懸念を示しており、経産省は資金繰り支援の検討に入った。

 同日、会見した経団連の榊原定征会長も「円高株安が長期化すれば企業業績が低下し、個人の節約志向が助長される。経済対策を含む政策総動員を求めたい」と、政府に対応を求めた。

 ■英国のEU離脱決定で経済界に困惑広がる

 ≪事業見直し≫

 □三菱重工業・宮永俊一社長

  英国は日本企業にとって非常に良い事業拠点。事業環境ができる限り損なわれないように願う

 □トヨタ自動車・早川茂専務役員

  懸念材料などを慎重に検証する

 ≪為替変動≫

 □日本商工会議所・石田徹専務理事

  望ましい為替水準は(1ドル)115円前後。明らかに行きすぎ

 □三井物産・加藤広之副社長

  急激な変動は困るので、まずは為替の安定化を

 ≪支援策要請≫

 □経団連・榊原定征会長

  政府・日銀に、しっかりとした適切な対応をしてもらいたい

 □丸紅・山添茂副社長

  情報提供の場を設けてほしい。まずは情報収集