税収下振れ、財源確保に不安 円高で業績悪化 経済対策へ赤字国債も

 

 英国の欧州連合(EU)離脱が決まり、円高・株安が進む中、政府が秋に予定する経済対策の財源確保が危ぶまれ始めた。2015年度の税収は7年ぶりに見積もりを下回る見通しで、16年度も円高進行による企業業績の悪化などで税収が伸び悩む恐れがあるためだ。一方、経済対策の規模拡大を求める声は強まっており、赤字国債の発行で財源を賄う可能性もある。

 15年度の国の一般会計税収は、1月時点の想定を約1000億円下回る56兆3000億円程度となる見込み。14年度実績(53兆9707億円)を2兆円超上回るものの、リーマン・ショックのあった08年度以来、見積もりを下回ることになる。

 賃上げや株式配当収入などで所得税収は好調だったが、年初からの円高で企業業績が低迷、法人税収などが伸び悩んだ。

 麻生太郎財務相は28日の会見で、税収の見積もりについて「精度はかなり上がってきている」と述べた。

 第2次安倍晋三政権が発足した12年度以降、国の税収は企業業績の改善などで毎年度、見積もりを1兆~2兆円程度上回ってきた。こうした税収の上振れ分は歳出の使い残しとともに“剰余金”として、翌年度の補正予算の財源などに使われてきた。

 政府は今秋、経済対策を柱とする16年度第2次補正予算案を編成する方針だ。ただ、15年度の税収が当初の見積もりより増えないとなれば、財源として活用できる余地は限られる。

 別の財源としては、16年度の国債利払い費の減少分があるが、7780億円分は熊本地震の復旧・復興に向けた第1次補正予算の財源にあてられた。

 残る選択肢は、16年度の税収の上振れ分など。ただ、英国のEU離脱によって安全資産とされる円が買われ、円高が加速している。輸出企業などの業績が悪化すれば、法人税収などはさらに縮小しかねない。

 政府は保育施設の整備など社会保障の充実策にも取り組む方針を打ち出してきたが、税収の伸び悩みで財源の当てが外れ、厳しい財政運営を強いられる恐れがある。