英EU離脱 続く動揺 円高対策焦点 首相、機動的対応指示

 

 英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる金融市場の動揺が続いている。28日の東京金融市場では、世界経済の先行き悪化懸念から日経平均株価が300円を超えて大幅に下落し、その後に日銀の追加金融緩和への期待などから買い注文が膨らむなど乱高下。長期金利は過去最低を更新した。安倍晋三首相は28日開いた経済財政諮問会議で、「為替市場を含む金融市場の動きにこれまで以上に注意を払ってほしい」と述べ、市場安定に向け機動的な対応を取るよう関係閣僚らに指示したが、投資家の不安の払拭は容易ではなない。

 ◆緩和期待で買い戻し

 諮問会議では、日本経済の減速を回避するための方策が議論された。麻生太郎財務相が22日以降の為替の動きや先進7カ国(G7)としての対応を説明。黒田東彦日銀総裁は各国の中央銀行が連携して流動性の確保と潤沢な資金供給に努めていく方針を述べた。

 安倍首相は「G7が一致協力し、金融市場の安定に全力を尽くすという強い意志をマーケットに発信し続けることが重要だ」と強調。民間議員からは「不確実性が蔓延(まんえん)しており、将来不安を取り除く政策が必要だ」などの意見が出された。

 黒田総裁は会議後に記者団の取材に応じ、EU離脱決定に伴う日本経済への影響に関し「日銀としての金融政策の考え方は以前から申し上げている通りだ」と述べ、必要に応じて追加金融緩和をする考えをあらためて表明。これを受けて、平均株価が一時1万5000円を割り込むなど朝方から売り注文が先行していた東京株式市場では、政府・日銀が財政政策や追加の金融緩和策を打ち出すとの期待から内需関連株を中心に買い戻され、平均株価は前日比13円93銭高の1万5323円14銭で取引を終えた。

 ◆経常益2.4兆円減も

 だが、投資家の先行き不安感は依然、根強い。この日も比較的安全な資産とされる国債を買う動きが強まり、国債市場では長期金利の指標である新発10年債の利回りがマイナス0.230%と、過去最低を更新。やや落ち着いたとはいえ、円相場も1ドル=101円台後半から102円台と、主要企業の想定レートより大幅な円高水準にある。

 SMBC日興証券の渡辺浩志シニアエコノミストの試算では、円相場が2016年度を通じて1ドル=100円で推移した場合、国内で上場する製造業の経常利益総額は、当初の見込みより2兆4615億円もの減益になる。中でも輸出の割合が高い自動車などの輸送機器や機械・精密機器、電機といった業種への打撃が深刻だ。

 政府内でも円高再燃への警戒感が高まっている。菅義偉官房長官は28日の記者会見で、英国のEU離脱問題に関し、「まず大事なのは金融市場の短期的な動きを注視することだ」と強調。景気の下支えのため参院選後にまとめる予定の経済対策を急ぐよりも、市場の安定化に優先して取り組む考えを示した。自民党も同日、稲田朋美政調会長をトップとする緊急特別本部の初会合を開催。大型補正予算の編成を視野に、円高対策の検討に着手した。

 市場の混乱が長引けば景気の下押し圧力は確実に強まるだけに、経済対策の具体案の策定に向けても、円高の動向は焦点となりそうだ。