OECD租税委開幕 課税逃れ防止、100カ国超へ 対策参加国拡大
国際的な課税逃れ対策を協議する経済協力開発機構(OECD)の租税委員会が30日、京都市で開幕した。多国籍企業の課税逃れ防止策への参加国を現行の46カ国から100カ国以上に拡大する見通しとなったほか、対策に非協力的な国を特定する3つの基準を策定。新興国や途上国も巻き込んで税の抜け穴をふさぎ「パナマ文書問題」で関心が高まった課税逃れ対策の実効性を高める。
日本からはOECD租税委の議長を務める浅川雅嗣財務官のほか麻生太郎財務相が出席した。麻生氏は会合後の会見で「国家主権の中核である課税権で国際協調が進んだ点で特別な意義がある」と述べた。
OECDは策定した基準をもとに、課税逃れ対策に非協力的な国を名指しする「ブラックリスト」を来年にもつくり、制裁を科すことを含め検討する。
だが、一方で課税逃れの国際協調を乱しかねない火種もくすぶる。策定した3つの基準をすべて満たさなくても2つ満たせば、非協力国としてブラックリストに載らずに済む玉虫色のルールとなったためだ。
基準の一つは、各国の税務当局間で自国に居住しない外国人の金融口座情報を年に1回自動的に交換する枠組みへの参加の公約。富裕層らが海外への資産隠しを通じ脱税するのを防ぐ枠組みで、101の国・地域が参加し、2017年から順次始まる。
ただ、参加を公約しても態勢が整っていなければ、実行できない。そこで、国際組織から既存の情報交換協定への取り組みが十分と評価されることと、税務当局間で情報交換する多国間条約への署名という基準も設けた。税務当局の業務体制と情報交換のパイプに客観的な裏付けを持たせ、実効性を担保する考えだ。
逆にいえば、3つの基準がすべてそろわないと自動的情報交換を適切に行えないはず。だが、肝心なブラックリストの判断は曖昧にした。
背景にあるのは米国への配慮だ。米国には米国人の海外口座情報を海外当局から一方的に入手できる独自制度があり、相互の情報交換への参加を表明していない。米国をブラックリストに載せ早期参加を促すべきだとの声もあったようだが、結局は対立を避けた格好だ。
国際協調で新興国をリードする立場の先進国に配慮したルールづくりは、新興国の不満につながる懸念がある。国際通貨基金(IMF)改革の際も、米国が新興国の出資比率引き上げの議会承認を先送りし、新興国が不満を募らせたことが中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立につながったとされる。課税逃れ対策で同じ轍(てつ)を踏まないためにも、米国の参加公約をどう引き出すかが今後の重要な課題になりそうだ。(万福博之)
◇
■OECD租税委員会会合初日のポイント
【多国籍企業の課税逃れ防止策】
・参加国が46カ国から82カ国に拡大
・数カ月以内にさらに21カ国が加わり100カ国超に
・実施に向けた体制整備などを議論
【金融口座情報の自動的情報交換】
・非協力国を特定する3つの基準を策定
・3つの基準のうち2つを満たさなければ、来年にも作るブラックリストに載せ、制裁を科すことを検討
関連記事