消費増税で世代間格差の解消を 土居丈朗・慶応大教授
政策を問う日本財政の一番深刻な問題は社会保障の財源の確保だ。できるだけ早く税で確保しないと、世代間格差が拡大する。事実上、社会保障に必要な財源の3分の1は赤字国債で賄われている。(消費税率を)8%から10%に上げれば年3兆円の国債発行を抑制できる効果が見込まれたが、(再延期された2019年10月まで)引き続き赤字国債で賄うしかない。
(今回の参院選で)選挙権年齢が18歳以上に引き下げられた。若い人たちのためにも一日も早く増税して負担を世代間で分かち合うべきで、先送りは残念だ。
「低金利だから国債を発行して問題ない」という意見があるが、本当に国民に必要な財政支出なのかコスト意識が働かず、中身や質がおろそかになりやすい。元本はいずれ返済しないとならず、本来は便益を受けた人が負担すべきなのに、全く関係のない将来世代につけ回しされてしまう。
経済成長より早いスピードで社会保障費は増えていく。(団塊の世代が75歳以上になる)25年ごろには消費税率を最低でも15%程度まで上げないと支えられないだろう。今の給付水準を維持するなら、20%はないと難しい。10%に上げた後のことを積極的に議論すべきだ。
25年までに医療や介護の財源を確保する態勢が整わなければ「入院が必要な患者が入院できない」「介護が必要な人に介護職員を手当てできない」といった悲惨な事態が顕在化するだろう。
もちろん給付の効率化は必要だ。ここ数年で医療や介護のデータが取れるようになり、「見える化」してきた。レセプト(診療報酬明細書)データを分析して、過剰投薬になっていないかチェックしたり、重度化の予防に役立っていない介護サービスを改めたりすれば、患者や利用者に迷惑をかけず歳出削減できる。
これは骨太の方針(経済財政運営の基本方針)にも書かれており、安倍晋三政権は25年に向け、いいスタートを切っていた。(消費税増税の再延期で)コースからそれる懸念が出ているが、姿勢を戻してゴールを目指す必要がある。
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【プロフィル】土居丈朗
どい・たけろう 東大大学院経済学研究科博士課程修了。2009年4月から現職。専門分野は財政学、公共経済学。政府の一億総活躍国民会議議員や財政制度等審議会委員、社会保障制度改革推進会議委員も務める。45歳。奈良市出身。
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【用語解説】日本の財政状況
第2次安倍晋三政権が発足した2012年度以降、税収は増加傾向にあるが、16年度一般会計予算でも歳入の3分の1程度は借金にあたる国債で賄われた。少子高齢化で年金や医療など社会保障費の増加が止まらない。
一方、国債残高は16年度末見込みで約838兆円で、低金利とはいえ、元利払いに充てる費用は年20兆円を超えている。
政府は消費税増税を再延期したが、借金に頼らず政策経費を賄えるかを示す基礎的財政収支を20年度に黒字化する目標は堅持した。財政健全化を進め、持続可能な社会保障制度を構築することが欠かせない。
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