中小企業の社会保障負担軽減を

安倍政権に求める

 □東京中小企業家同友会代表理事・三宅一男氏

 今、一番心配しているのが中小企業の経営が内向きになっていることだ。3年前まで社長を務めた段ボール製造会社に今でも顔を出すが、さばき切れないくらい注文がある。だが、今後の見通しが読めないから、受注を断ってでも設備投資はしないと言っている。背景には、経済の先行きへの不安感がある。為替にしても安定が望ましいが、英国の欧州連合(EU)離脱決定時には急速な円高が進んだ。為替の乱高下は、前を向いて何か事業をしようとするときのブレーキになる。

 従来、一番大きなネックだった資金繰りは今やほとんど表面化しなくなった。大規模な金融緩和の結果、銀行からはお金を借りてほしいという話はものすごく多い。しかも1%を切る金利を提案されるなど、ここ何十年で一度もないことが起きている。それでも、中小企業は借り入れを増やしておらず、金融中心の経済政策は効き目がなくなったと実感する。

 参院選には失望した。当会では選挙前に全政党に中小企業対策で何に力を入れているかといった質問状を出しているが、中小企業を真正面に捉えた政策を提案している政党は皆無だった。雇用者の7割は中小企業に勤めている。7割の人をどうするかを軸に据えた経済政策を考えてほしい。内閣改造の際には、中小企業担当相を設置してほしいくらいだ。

 中小企業が雇用者にきちっとした給料を払えるようになる税制や社会保障の施策を期待したい。例えば、(年金や医療保険などの)社会保障費は中小企業にとって負担が本当に重い。この負担を軽減してもらえれば、その分を給料に回すことができて、従業員の可処分所得を増やしていける。

 中小企業のマインドを後押しするような税制も必要だ。安定した消費を産業の裾野から盛り上げていく政策を求めたい。

 中小企業でも経営者が親の介護で経営に支障が出たり、従業員が待機児童問題などを抱える例がいくつも出ている。介護や子育ての問題を政府が責任を持って引き受けることは、産業の基礎を支える上で非常に重要だと思う。(万福博之)

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【プロフィル】三宅一男

 みやけ・かずお 国際基督教大教養卒。1966年川重商事入社。三和パッキング社長を経て、現在エピックホームズ社長。2014年東京中小企業家同友会代表理事に就任。74歳。東京都出身。