政府の経済対策、財投活用で財政健全化配慮 中小支援や奨学金拡充
政府は月内にまとめる経済対策で、国が調達した資金を民間に貸し出す財政投融資(財投)を積極活用する方針だ。日銀の金融緩和を背景に超低金利で利用でき、規模を膨らませても財政の健全性を示す指標が悪化しないためだ。一方で、既存の金融機関などの民業圧迫や、将来の金利上昇などのリスクを指摘する声も少なくない。
政府は景気の下支えに向け、総合的な経済対策を月内に策定。裏付けとなる2016年度第2次補正予算案を秋の臨時国会に提出する。対策の一部は17年度予算案にも反映し、各省庁の要求の目安となる概算要求基準は、今月中にも閣議了解する方針だ。
ただ、財源は限られており、政府は3兆~5兆円規模の財投を積極的に活用してインフラ整備などを促そうとしている。
財投は政府が国債の一種である財投債を発行して調達した資金を原資に、政府系金融機関などを通じ、民間に投融資を行う仕組み。貸したお金は返済される前提で、赤字国債などと違い将来に負担を先送りすることがない。一般会計予算の枠外で、財政の健全性を示す基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)にも影響しない。
日銀のマイナス金利政策も財投活用を後押しする。超低金利の環境を受け、政府は財投の貸出下限金利を現行の0.1%から下げることを検討している。
活用の対象として浮上しているのは、安倍晋三首相が最大8年程度の前倒しを表明したリニア中央新幹線の全線開業事業のほか、英国の欧州連合(EU)離脱決定で、資金繰りの悪化が懸念される中小企業の金融支援だ。奨学金の返済に行き詰まる人が増えており、低利奨学金の拡充なども視野に入れる。
ただ財投をむやみに拡大すれば、採算を度外視した事業に資金が投入されたり、民間銀行の融資機会を奪ったりしかねない。将来的に日銀がマイナス金利政策を見直す可能性もある。貸し出しが長期間にわたる財投は、財投債を借り換える際に金利が上昇していた場合、調達コストが貸出金利を上回る「逆ざや」が生じ、損失が出る恐れもある。(中村智隆)
関連記事