G20財務相会合閉幕 経済政策では「協調」、南シナ海では「対立」…中国の“矛盾”浮き彫り 国際社会に不信感募る
主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で議長を務めた中国は、成長鈍化や過剰生産、不良債権など国内問題が噴出する。経済面で「国際協調」を主導することは自国の利益につながる。一方、「国際法違反」とされた南シナ海をめぐる仲裁裁判所の判断は「紙くずだ」と拒否し、外交や軍事面では国際社会との「対立」を深める政策矛盾が浮き彫りになった。(成都 河崎真澄)
中国の楼継偉財政相は24日、G20閉幕後の記者会見で、金融と財政の政策や構造改革を総動員するG20メンバーの「協調」を共同声明に盛り込んだことに満足げな表情をみせた。
新興国を含むG20の政策協調が世界経済の回復に欠かせないことは間違いないが、「国際法を順守しないことが明確になった独善的な国家が訴える経済政策上の『協調』など、誰の心にも響かない」(北京の外交筋)と共感を得られず、逆に不信感を強める皮肉な結果も生んでいるようだ。
中国はすでに、経済面で失態を続けている。
今年2月に上海で開いたG20財務相・中央銀行総裁会議で、中国は鉄鋼など過剰生産の問題を指摘された。しかし、必要な構造改革は既得権益層の抵抗で進まず、今回も経済に悪影響を与える「世界的課題だ」と、中国を念頭に置いた声明が盛り込まれた。
米国やインドネシアなど世界各地で野心的に進めたインフラ輸出は、計画の頓挫や延期などの混乱を引き起こし、国際的なビジネス相手としての信頼も失墜し始めた。
中国は今年12月、世界貿易機関(WTO)加盟から15年を迎えるにあたり、貿易通商面で有利になる「市場経済国」に中国を認定するよう強く迫っている。
これに対し欧州連合(EU)の欧州委員会は「不当な安値輸出に歯止めがきかなくなる」として要求を認めない方針を今月20日に決めた。金融市場の自由度の低さもネックで、責任ある国際社会の水準に達していないと突き放された。
それでも、世界第2の規模に至った中国の経済が冷え込み、世界中に「チャイナリスク」を広げないようにしたいのが日米欧などの苦しい本音でもある。
日米欧などは、浙江省杭州での9月のG20首脳会議で中国に対し、南シナ海の紛争に厳しい目を向けつつも、国際社会の信頼がいかに欠かせないかを説き、経済問題の解決を粘り強く求めていくとみられる。
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