「一帯一路」早くも正念場に 拓殖大学名誉教授・藤村幸義
専欄中国が華々しく打ち上げた現代版シルクロード構想「一帯一路」が早くも正念場に立たされている。「一帯一路」の沿線国の中には、政治的に不安定なところが少なくない。また各国の財政難からプロジェクトの資金分担をどうするかをめぐって、交渉が暗礁に乗り上げる例も出てきている。さらに中国が輸出するインフラ関連設備の品質問題も起きている。
「一帯一路」の具体的なプロジェクトが動き出すにつれて、貿易や投資面で効果が出始めてきたのは確かである。今年上期の中国の輸出入総額は、昨年同期比で3.3%のマイナスとなった。ところが、「一帯一路」沿いのパキスタン、ロシア、バングラデシュといった国々との貿易は増えている。また習近平国家主席は訪問先のウズベキスタンで、「一帯一路」参加国への中国企業の投資が昨年は前年比20%増の約150億ドル(約1兆5388億円)に達したと明らかにした。
ところがプロジェクトが進むにつれて、予想外の問題が噴出し始めている。「一帯一路」の中核ともいうべきプロジェクトは中国の昆明からラオス、タイを経てシンガポールに至る約3000キロの高速鉄道計画だが、進捗(しんちょく)状況は思わしくない。
タイとは首都バンコクとラオス国境のノンカイを結ぶ路線の交渉が続けられてきた。タイ側からすれば、中国への期待が大きかったわけだが、融資をめぐる金利や沿線の開発権などで交渉は難航。業を煮やしたタイ側は、一部区間を自己調達資金で建設すると発表してしまった。残りの区間がいつ着工できるかは分からない。
ラオスでも工事はまだ始まっていない。ここでも資金面での分担をどうするか、双方の折り合いがついていないようだ。
シンガポール、マレーシアとも交渉が続いている。ところがその最中に、中国がシンガポールの地下鉄運営会社に納入した地下鉄車両で亀裂などが見つかるという事件が発生した。高速鉄道プロジェクトへの影響も懸念される。
中国政府の主導で作られたアジアインフラ投資銀行(AIIB)はこのほど、最初の融資案件4件を決めた。しかし投資総額はわずか5億ドル強にとどまっている。中国社会科学院がこのほど発表した「『一帯一路』建設発展報告(2016年度版)」でも、動き出しはしたが、政治的な不安定、財政面での資金不足など、さまざまな問題に直面していると指摘している。
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