中国の「肉食」が世界を滅ぼす? 国連示唆で波紋、避けて通れぬ「肉税」議論
肉の生産が温室効果ガスの排出に影響しているとして、国連機関が「肉食」への課税を示唆した報告書を公表し、波紋を広げている。中国などの新興国が先進国と同じ食生活をすると、世界は深刻な環境問題と食糧危機に直面するというのだ。すでに一部の国では「肉税」の導入を議論しはじめており、日本も注視せざるを得ない状況が訪れるかもしれない。
「もはや隠し通せない時期」
報告書は国連環境計画(UNEP)の国際資源パネル(IRP)が今年5月に公表した。人口増加と食生活の変化、気候変動が、今後数十年間で食糧生産に危機をもたらすとして「食糧システムの根本的な変化が必要だ」と訴えている。
内容は多岐にわたるのだが、ニュースの焦点が当たったのは「肉税」だった。
英紙ガーディアン(電子版)は「中国のような新興国が欧米を模倣して肉を食べるならば、世界は深刻な環境問題に直面する」と報じた上で、報告書をまとめた専門家がこう述べたと伝えている。
「消費者レベルで課税するのは、挑発的だが効果はない。サプライチェーン(供給網)の初期で価格を上げる方が簡単でいい」
つまり、生産者に「肉税」を課せば肉の値段が上がり、結果として消費者もあまり食べなくなるという趣旨の発言だ。
別の専門家は「消費者の選択に対処することはとても敏感な問題だが、もはや隠し通せない時期が来ている」と同紙に語った。
シュワちゃん「週1肉なし」を宣言
IRPの報告書は、世界人口の約3割に当たる20億人以上が過体重か肥満である一方、8億人以上は飢餓で苦しんでいるとして「現在の食糧システムは持続可能ではない」と断言している。
中でも肉食を問題視しているのは、畜産が環境にかける負荷の大きさがあるとみられる。
たとえば、肉牛を育てるには、放牧場などの広大な土地が必要で森林伐採を伴う。飼料となる穀物を育てるためにも農地は必要となる上に、農業用水や牛の飲料水として水を大量に使うとの指摘もある。
2015年12月にパリで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では、元カリフォルニア州知事で俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏が、英BBC放送のインタビューに「温室効果ガスの28%は畜産によるものだ」と語った。
その上で「週1~2日だったら肉を食べないことに賛同が得られるだろう」と述べ、「肉食を減らせば地球を救える」と宣言したとして、話題を集めた。
日本は“ニクメン”
「肉税」については、IRPによる今回の報告書公表に先立つ今年4月、デンマークが赤身の肉に対して導入を検討していると、英紙インディペンデントが報道。英王立国際問題研究所は15年11月、牛肉1キロ当たり1・76ポンド(約246円)の「炭素税」を課すことによって、14%の消費を削減できると試算していた。
さらに13年11月には、ノルウェー軍が隊員に提供する食事を毎週月曜だけベジタリアンフードとし、気候変動という新たな“敵”と戦うことに決めた-とAFP通信が報じている。
一方、日本では正反対の政策が取られている。
通称“肉免”(肉用牛免税)と呼ばれる「肉用牛売却所得の課税特例措置」。畜産農家や農業生産法人が肉用牛を売却したとき、一定の条件を満たせば、年間1500頭まで所得税や法人税、住民税が免除されるという仕組みがあるのだ。
畜産業の保護には欠かせない政策なのかもしれないが、こうした租税特別措置には、税金を使っているのと実質的に変わらないという指摘もある。
果たして今後、「肉税」が議論の対象になる可能性は、あるのだろうか。