ふるさと納税 利点と問題 復興支援に活用、特典過熱で寄付拡大
ふるさと納税による寄付が急拡大し、税収が大きく減る自治体が出ている。過熱する返礼品競争に距離を置く自治体ほど、しわ寄せを受ける面もあり、行き過ぎた特典の見直しを求める声が上がる。一方、災害に見舞われた自治体の復興を支援する手段としても定着しつつある。制度開始から8年、問題点とメリットが明確になってきた。
◆税収減で赤字1億円
「国は根本的に見直すべきだ」。返礼品を用意していない長野市の加藤久雄市長は7月の記者会見で、不満をあらわにした。長野市は市民が2015年に利用したふるさと納税により1億1538万円の税収を失う。これに対し、15年度に受け取った寄付は955万円。おおむね1億円規模の赤字だ。
市の担当者は「特典競争はやりたくないが、何もしないと多額の収入が失われる。痛しかゆしだ」と頭を抱える。
和牛、カニ、ブランド米など豪華な特典を競い、返礼品で寄付先を選ぶ傾向に拍車が掛かっている。現金に換えやすい金券や家電を贈る自治体も増え、総務省が自粛を求める通知を出す事態にまで発展した。
ふるさと納税の黒字額トップは、特典の宮崎牛や焼酎が人気の宮崎県都城市。地方の特産物をお礼に贈るのは地場産業の振興に役立つ面もあるが、都市部は「返礼品を競い合う今の状況は正しい姿ではない。本来の趣旨に立ち返るべきだ」(東京都港区)と反発する。
長野市の加藤市長は、一定規模以上の自治体には特典を厳しく制限する仕組みが必要と強調。ふるさと納税に詳しい島田晴雄千葉商科大学長は「自治体は、良い政策を立案して寄付を多く集める努力をすべきだ」と指摘する。
4月に発生した熊本地震では、熊本県に約36億7000万円のふるさと納税が7月中旬までに寄せられた。約9000万円だった15年度分の40倍近い寄付が地震発生から3カ月ほどで集まった。「復興を願う気持ちを全国から寄せてもらった。感謝しながら復興事業を進めたい」と県担当者。焼酎やデコポンなどの特産品を返礼品として受け取ることができるが、辞退した人も多かったという。
◆本来の狙い立ち返り
ふるさと納税を通じた被災地支援は、東日本大震災をきっかけに広まった。15年にも、茨城県で鬼怒川の堤防が決壊した関東・東北豪雨や、箱根山(神奈川県)の火山活動で盛んに活用された。
08年に創設されたふるさと納税はもともと、生まれ育った土地など、ゆかりの自治体を応援する仕組みとして企画された。本来の狙いを思い起こす必要がありそうだ。
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