五輪競泳 「金」メダルのホートンが孫楊を罵倒 中豪場外バトル…さらに紛糾?
ロシアによる国ぐるみのドーピング不正がリオデジャネイロ五輪に影を落とす中、競泳男子400メートル自由形で金メダルを獲得したマック・ホートン(オーストラリア)が、2位の2012年ロンドン五輪金メダリスト、孫楊(中国)を「薬物使用者」と呼び、中国のインターネット上で集中砲火を浴びている。国民の関心の高まりに、中国水泳協会が正式にオーストラリア側に謝罪を求める抗議文を送りつけるなど、事態は政府間の問題に発展しかねない状況だ。
ホートンは競泳男子400メートル自由形予選が終わった後、中国人記者の取材に対し、2014年にドーピング検査で興奮剤トリメタジジンに陽性反応を示し、3か月の出場停止処分を科された過去がある孫楊を「薬物使用者」「詐欺師」と形容した。
決勝レース後の記者会見で、ホートンは当初、「孫楊の泳ぎはとてもよかった。彼がとてもよい成績を出したことに感謝している。彼によってわれわれのレースがさらに貴重なものになった」と友好的な言葉を発していた。
しかし、中国人記者が予選レース後の発言の真意をただしたところ、ホートンは発言を撤回するどころか、「私があのように言ったのは、彼がドーピング検査で陽性だったからだ」「ドーピング検査で陽性を示した選手と同じプールで戦いたくはない」と言い放った。
さらに別の中国人記者が「2人の関係はとても緊張しているように見えるが、なぜ友だちになれずに、このように一触即発なのか?」と尋ねると、ホートンは孫楊に対する敵意を否定し、「私はドーピング検査で陽性反応だった選手に対して不満があるのであって、孫楊に対してではない」と釈明した。
会見場に遅れて現れた孫楊は、ホートンと中国人記者の“バトル”を知らずに席に着いた。中国人記者が孫楊にホートンの発言について質問したところ、孫楊は「己が潔白なら説明するまでもない。五輪に参加する選手はみな尊重されるべきだ」と述べたという。
会見場には険悪な雰囲気が漂ったというが、中国メディアは孫揚の様子を「腹を立てることなく、顔に笑みさえ浮かべながら」と伝えた。
国内外で騒動を引き起こしてばかりの孫楊を毛嫌いしていた中国国民も、米国の同盟国オーストラリアの選手が相手とあって態度を一変。中国のネット上には、「(ホートンは)試合で勝って、人品で負けた」「オーストラリアは米国の犬だ」「ホートンは自分が使った新薬に(陽性反応が出ない)自信があるのだろう」といった批判が殺到している。
中国国営新華社通信によると、中国国内でこの問題への関心が高まる中、中国水泳協会は7日、オーストリア水泳協会に謝罪を求める抗議文を正式に送った。
同通信によると、中国側は抗議文の中で、ホートンの発言を「悪意に満ちた下劣な言動」と批判。「ホートンの不当な言論は中国及びオーストラリア水泳界の感情を害し、オーストラリア選手のイメージを損ねており、素養と教養を欠く表現だと認識している」と主張している。
その上で中国側は、「われわれはホートンが謝罪するよう強く要求する!」とオーストラリア側に迫っている。国内向けに、一度振り上げた拳をなかなか下げられないのが中国側の常。オーストラリア側の今後の対応によっては、事態がさらに紛糾し、両国政府間の問題に発展する可能性も否定できない。(五輪速報班)
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