G20会議目前に中国が強権発動 習近平氏ゆかりの地でメンツかけ躍起
主要20カ国・地域(G20)首脳会議を9月4、5両日に開く中国浙江省の杭州市で、早くも厳戒ムードが広がっている。市内に向かう他省ナンバー車に厳格なチェックが義務づけられ、不審物を警戒し会議場付近や観光地でマンホールが封印された。大気汚染対策として周辺の工場に停止命令を出したりするなど、強権的な措置も相次いで発動。杭州市は習近平国家主席ゆかりの地だけに、メンツにかけても会議を無事成功させようと躍起だ。(杭州 河崎真澄)
「写真を撮るな!」。警備員の鋭い声が響いた。世界遺産の「西湖」で知られる杭州市の南東部。約80億元(約1200億円)をかけて新たに建設した国際会議場の周辺はピリピリした雰囲気に包まれていた。
日米欧に新興国を加えた20カ国の首脳が集まる国際会議で、テロへの警戒からさまざまな警備が徹底されるのは当然だ。だが当局側は、強権的ともいえる手法で住民や企業への規制も強めているようにみえる。
地元紙によると、杭州市当局は外国人の目に触れる可能性のある古い住宅など約900万平方メートル、違法建築約1000万平方メートルを取り壊したり、改築させたりしたほか、違法な野外広告の看板約6000枚を撤去した。
各国首脳や政府関係者らの移動をスムーズにするためとして、市当局は企業や学校を9月1日から7日まで休ませ、その代わりに週末の8月28日と9月9、10の両日に出勤や授業をさせる異例の措置も決めた。
ほかにも市中心部から半径300キロ以内の工場に8月28日から9月6日までの操業停止が命じられた。すでに当局は周辺地区で煤煙(ばいえん)を大量に出す工場を指導したもようで、微小粒子状物質PM2・5を含む大気汚染指数が8月に入り杭州市などで大幅に低下した。
だが、近郊で物流会社を経営する男性(45)は「G20が終われば違法建築や看板は元に戻り、工場から汚染物質がモクモク出る風景に逆戻りするだろう。休日を一方的に変えられるのも迷惑だ」と怒りを隠せない様子で話した。
中国は今年初めてG20議長国となり、首脳会議で習国家主席が議長を務める。その習氏にとって杭州市はかつて浙江省の党委書記などとして君臨したゆかりの地だ。メンツをかけて開催準備を進めるのはいいが、首脳会議終了後に「元のもくあみ」では逆にメンツを失うことになりかねない。
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