日銀総裁、任期内「物価2%上昇」なるか
日銀が9月の金融政策決定会合で、金融緩和の「総括的な検証」をまとめるのは、物価が伸び悩み、「6月までの直近4カ月連続で前年同月比下落」という苦しい事情があるからだ。日銀は現在、2%の物価上昇目標の達成時期を黒田東彦総裁の任期ギリギリの「2017年度中」としているが、物価が上向く兆しはまだ見えてこない。
黒田総裁はインタビューで「2%目標をできるだけ早期に達成するには何をすべきか考える必要がある」と話した。
「黒田バズーカ」と呼ばれる大規模な金融緩和を2013年4月に導入し、2%を「2年程度」で達成すると宣言。当初は物価を押し上げる力強さがみられ、1年後の14年4月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)が、消費税増税の影響を除き前年同月比1.5%上昇するまで浮上した。
しかし、同年夏以降に原油価格が急落すると物価上昇の勢いは一気に失われた。今年3月からはマイナス圏に沈んだままだ。
企業や家計にも「デフレ再燃」の気配が漂い始めた。牛丼チェーンの吉野家は4月、牛丼より安い豚丼を約4年ぶりに復活。カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングも今年の秋冬物の一部に低価格品を投入する。値上げで遠のいた客足を取り戻すための挽回策だ。
消費者が値上げを受け入れるには賃金の上昇が欠かせない。16年春闘では、中堅・中小企業も含め3年連続で賃上げが実現したものの、伸び率は6月末時点で2.0%と前年実績の2.2%を下回った。
黒田総裁も「賃金の上昇率が少し鈍いという感じは持っている」とこぼした。
春闘は前年の物価の動きが目安となる。原油価格が大きく下がったため、「賃金の上昇率が下がる傾向はあるかもしれない」(黒田総裁)。さらに、日本では長年デフレが続き、企業や家計の物価観がまだまだ低いという事情もある。
「原油価格が回復すれば、物価上昇率は徐々に上がっていく」
黒田総裁はこう強調したが、世界経済の先行き不安が強まると円高が進み、輸入物価を下押しする恐れも出てくる。日銀が金融緩和で物価を再び力強く上昇させられるか、「総括的な検証」への注目度は高まっている。(米沢文)
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