FRB、利上げへ布石着々 イエレン議長口火 雇用が焦点

 

 米連邦準備制度理事会(FRB)が年内の追加利上げへ布石を打ち始めた。イエレン議長が26日の講演で強い意欲を示すと、他の幹部もせきを切ったように金融引き締めに前向きな姿勢を表明。ただ最大の関門となる雇用が失速すれば、空振りに終わりかねない。世界経済を左右する米金融政策の行方を、日銀も固唾をのんで見守っている。

 好スタート

 イエレン氏が利上げへの口火を切る舞台に選んだのは、米西部ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた恒例の経済シンポジウムだった。各国の中央銀行幹部らが参加した会合で「ここ数カ月で利上げの根拠が増した」と踏み込み、景気の先行きに自信を見せた。

 フィッシャー副議長も26日、米テレビで「雇用と物価はFRBの目標に近づいている」と述べ、早期利上げを支持した。金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つ連邦準備銀行の総裁も続いた。

 為替市場では、利上げが近いとの見方から円安ドル高がじわじわと進行。米大手取引所CMEグループが算出している9月の利上げ確率は25日に比べ12ポイント高い33%に上昇し、FRBの地ならしは好スタートを切った。

 イエレン氏の「利上げ予告」は今回が初めてではない。5月下旬に「数カ月のうちに利上げが適切になる」と発言。6月の利上げ観測が広まり、円安ドル高が進んだ。

 ところが、6月上旬に発表された5月分の雇用統計で、景気動向を反映する非農業部門の就業者数の伸びが急激に落ち込み、円相場が急騰。イエレン氏は雇用統計に「失望した」と漏らし、6月の利上げを断念した。

 苦い経験を教訓に、26日の講演では「政策決定は常に経済指標次第だ」と予防線を張り、9月2日発表の8月分の雇用統計が失速すれば、利上げがずれ込む可能性があると示唆した。それでも、利上げへの意欲を2回も表明しながら実現できなければ、イエレン氏の発言に対する信頼感が失われることが危惧される。

 迫られる決断

 円安による輸出企業の業績改善や輸入物価の上昇を望む日銀にとって、日米の金利差が開いて自然と円安が進むことは理想的なシナリオだ。

 しかし、日銀内部にそうした楽観論はほとんどない。ある日銀幹部は「投機筋は今、どんなことでもドル売り円買いを仕掛ける材料にしている」と身構える。米国で9月利上げが濃厚になっても、円高が進む可能性は消えないとの見方だ。

 FRBが利上げの可否を判断する9月21日に、日銀も金融政策決定会合を開くが、時差の関係で約半日早く政策を決める必要がある。ジャクソンホールのシンポに出席した日銀の黒田東彦総裁は、米国の動向をにらみつつ、追加緩和の是非について独自の決断を迫られることになる。(ジャクソンホール 共同)