G20「協力」もアップル追徴に米国反発 課税逃れ対策、利害表面化
5日閉幕した20カ国・地域(G20)首脳会議は、国際的な課税逃れ対策の推進に向けた協力を支持することで一致した。公平な競争を阻害し、格差の拡大を助長する恐れがあるためだ。ただ、欧州連合(EU)がアイルランドに米アップルの課税を優遇したとして追徴課税を求めたのに対し、米国などが反発。各国の利害対立が表面化しており、協調に影を落とす可能性もある。
この日の会議で、安倍晋三首相は「国際的な租税回避や脱税の予防が重要だ」と述べ、日本として課税逃れ対策で主導的な役割を果たす決意を表明した。
京都市で開かれた経済協力開発機構(OECD)租税委員会は、各国の税制の隙間を狙った多国籍企業の過度な節税に対するルール整備などに合意している。G20は首脳会議でこうした取り組みを歓迎した。対策の実行には国際協調が欠かせないからだ。
ただ、EUの欧州委員会は8月、米アップルのグループ会社をめぐり、アイルランドが大部分の利益への課税を免除したとして、アップルに追徴課税を命じるよう同国政府に求めた。
これに対し、アイルランドは「課税主権に対する侵害」と異議申し立てを表明。米政府も猛反発した。追徴されればその分の税金をアップルから取れなくなるうえ、米企業を狙い撃ちしているとの不満がある。
税制は企業誘致策などとも密接に関係しており、実効性を確保するのは容易ではない。(杭州 田村龍彦)
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