安倍首相と習氏の日中首脳会談は冷たい言葉の応酬 「マイナス減らしてプラス増やそう」と双方発言も

 
会談を前に握手を交わす安倍首相(左)と中国の習近平国家主席=5日、中国・杭州(代表撮影・共同)

 日中関係の現状を象徴する会談だった。5日夜、中国・杭州で開催された日中首脳会談。1年5カ月ぶりの再会だったが、握手を交わす安倍晋三首相と習近平国家主席の表情はともに硬く、笑顔もなし。会談も、冒頭から冷たい言葉の応酬が続いた。

 習氏「中日関係は時に複雑な要素に妨害をされて機微かつ脆弱(ぜいじゃく)な一面も突出している。両国としては妨害を排除して一日も早く正常な発展の軌道に戻すように努力しなければならない」

 安倍首相「日中間に困難な問題、課題も少なくないが、戦略的互恵関係の考え方に立って、困難な課題をマネージしつつ、安定的な友好関係を築いていきたい」

 同時通訳で約35分の会談。日本同行筋は「かなり中身のある、やり取りができた」と強調した。とはいえ、習氏が「複雑な要素」、安倍首相が「困難な課題」と言及したのは、東・南シナ海をめぐる問題での対立が念頭にあるからにほかならない。

 東シナ海問題に関して安倍首相が「安定なくして日中の安定なく、真の意味で平和協力、友好の海とするため、ともに努力していく」と求めると、習氏も「安定を維持していく」と応じた。

 ただ、南シナ海問題について安倍首相が「地域の平和と安定に直結する国際社会の関心事項」として「法の支配」の重要性を強調したのに対し、習氏は日本は当事者ではないとする従来通りの中国側の立場を主張して平行線に終わった。

 「G20は経済問題が主要議題」-。会議前、日本政府には、中国政府が南シナ海問題を極力、避けようとする姿勢が伝わっていた。それでも首相がこの問題にこだわったのは、中国が4日に南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)に公船や作業船などを集結させたからだとみられる。

 会談の終わり、安倍首相は「マイナスを減らしてプラスを増やしていこう」と習氏に語った。ただ、これは会談の途中、習氏自身が日中関係の改善に向けて提案した言葉だった。首相に続き、習氏も再び同じ言葉を口にして会談を結んだ。

 首相が習氏の言葉を語ったのは、是々非々で対応する姿勢を中国側にアピールするためだったとみられるが、こうしたメッセージは中国側にどう伝わるのか。

 尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に公船を相次いで侵入させていた中国だが、8月下旬からは活動を沈静化させている。しかし、外務省幹部が「G20が終われば元の状態に戻るのではないか」と指摘するように、今後は、尖閣周辺での行動を再開し、南シナ海問題でも強硬姿勢を貫く可能性が高い。

(杭州・小島優)