太陽光発電制限、送電容量・需要不足が課題 上期は補助金駆け込みで設備急増

 
安徽省巣湖市にある村では、荒れた山の斜面に多くの発電用のパネルが置かれ、大規模な太陽光発電所となっている。今年上期、中国では集中型太陽光発電所の建設申請が数多く行われた(中国新聞社)

 中国の太陽光発電産業は発電量、利用量ともに世界トップだが、太陽光発電や風力発電が送電網の容量不足や電力需要不足などの要因で発電制限を余儀なくされる割合は高止まりし、産業の発展を妨げる難題になっている。それでも今年上期(1~6月期)の太陽光発電設備建設は急拡大を続け、業界関係者の間で、対策を強化しなければ問題はより一層深刻化するとの懸念が広がっている。中国国営新華社通信が伝えた。

 ◆新エネ代替進まず

 中国西北地域は国内でも集中型太陽光発電施設が多く、発電制限の最も深刻な地域だ。国家エネルギー局のデータによると、2015年の甘粛省の太陽光発電制限率は31%、新疆ウイグル自治区は26%だった。今年上期にはさらに悪化し、制限発電量は西北地域全体で32億8000万キロワット時、制限率で19.7%。中でも新疆では32.4%、甘粛は32.1%に上った。新疆は第1四半期(1~3月期)に一時52%まで悪化している。

 太陽光発電施設の開発を手掛ける正信光電科技の王迎春総裁は「土地が豊富で日照時間が長い西部地域は、太陽光発電所建設に適しているが、産業基盤が弱く、電力消費に限りがあるうえ、火力発電所が多く、送電網などの関連設備も不十分なため、太陽光は発電制限を余儀なくされる」と説明する。

 太陽光パネルメーカー、晶科能源の銭晶副総裁は「経済のモデル転換の影響を受け、国内の電力需要は伸び悩み、電力消費市場が縮小している。にもかかわらず一部地域では火力発電の電力を直接購入する大規模ユーザーもあり、新エネルギーの消費市場に割り込んでいる」と不満を示す。

 銭副総裁はまた、新エネ消費市場の仕組みが整備されていないことも発電制限の原因だと考える。中国の発電権取引や関連サービス取引は一部地域で風力と火力について試験的に行っているのみ。既存の発電会社に対する補償メカニズムがないため、火力発電会社は新エネルギーのために積極的に発電出力を調整しようとしないという。

 太陽光発電産業への補助金政策は6月末で終了したものの、上期中に集中型発電所建設の駆け込み申請が殺到、大量の新プロジェクトが認められた。

 国家エネルギー局の発表によると、今年第1四半期の太陽光発電新規設備容量は714万キロワットに上り、既に昨年の上期分の設置量に近づいている。

 ◆余剰分の売却検討

 中国太陽光発電産業協会の王勃華秘書長は「上期の新規設備容量は2000万キロワットを超え、前年同期の3倍以上になる。通年では2500万~3000万キロワットかそれ以上になるだろう」と予測する。

 国家発展改革委員会(発改委)が今年3月に発表した「再生可能エネルギー発電全額保障型買い取り管理弁法」では、(配電機関を含む)送電会社が国の定めた買い取り価格と買い取り電力量に基づき、市場競争のメカニズムや優先発電制度の実施、電力供給の安全性確保などの前提の下、計画範囲内で再生可能エネルギーによる発電量を全額買い取ることを求めた。それでも各種困難に直面し、発電制限が容易には減少しない現状がある。

 東方日昇新能源の王洪総裁は「発電制限が深刻な地域では、太陽光発電への投資を制限し、専用発電所や高効率発電所を除く発電所の過剰建設を防ぐと同時に、電力消費の新市場を開拓すべきだ」との考えを示す。

 また晋能清潔能源科技の楊立友総経理は、太陽光発電の地産地消を奨励し、火力発電の代替電力にしていくこと、地域を越えた送電網を拡充し、余剰電力を他の地域に送ることが、解決につながるとの見解を示した。

 集中型太陽光発電ばかりが急成長し、発電した電力を自分で消費して、余剰分を売電する分散型電源が推進されてこなかったことが現在の状況の根底にあるようだ。(上海支局)