「核なき世界」その前に 幸福実現党党首・釈量子
太陽の昇る国へ--先般、ナイロビでアフリカ開発会議(TICADVI)が開催されました
長年にわたって、中国は資源獲得・権益確保のため、国を挙げてアフリカ進出を図り、影響力を強めています。こうしたなか、日本として、アフリカのインフラ整備や人材育成などのため今後3年間で3兆円規模の投資を行うことを表明したほか、成果文書である宣言で、中国を念頭に、海洋秩序の維持が確認されたことなどは意義があったと思います。
中国は東シナ海や南シナ海で強引な海洋進出を図るほか、ジブチに海軍基地の建設を進めるなど、インド洋での影響力拡大もうかがっていますが、その覇権確立はなんとしても阻止しなくてはなりません。世界の秩序が揺らぐなか、中国を牽制(けんせい)するとともに、日本の国連安保理常任理事国入りを実現するためにも、経済・安保両面でアフリカ諸国との関係を一層強めねばならないと考えます。
--安全保障問題に関し、中国と並んで気がかりなのが、今年に入りミサイル発射を繰り返す北朝鮮の動向です。今月5日にも、3発の弾道ミサイルを発射し、北海道沖の日本の排他的経済水域(EEZ)に落下しました
北朝鮮の軍事的挑発はエスカレートする一方です。憲法の前文にあるように、国民の安全と生存を他国の善意に委ねるのは、あまりに非現実的というほかありません。
先月24日には、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射し、日本の防空識別圏内の日本海上に落下しましたが、北朝鮮の軍事技術が進展していることは疑いを入れぬ事実です。潜水艦から発射されるSLBMは事前探知が困難であり、今後、実戦配備されたなら、日本の置かれた状況はより一層深刻さを増すことになります。
こうした事案に対し、政府として北朝鮮に抗議はしているようですが、それがなんらの実効性を伴わないことは、これまでの北朝鮮の態度を見れば明らかです。抗議も結構ですが、さらなる制裁措置を実施するとともに、不測の事態も想定し、抑止力の強化を急がねばなりません。
--幸福実現党は2009年春の北朝鮮のミサイル問題を契機に立党しました
北朝鮮が発射した弾道ミサイルを「飛翔体」と称し、あたかも有事ではないかのようにふるまう自民党政権では、国家国民を守れないという危機意識から、立党しました。
以来、国防強化の必要性を訴えてきましたが、北朝鮮や中国の脅威が増大するなか、その主張が正鵠(せいこく)を射ていることは、手前味噌(みそ)ながら、誰の目にも明らかなのではないかと思います。
この間、わが党の働きかけもあって、昨年には集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法が成立するなど、日本の安保政策に転換もみられましたが、「今、そこにある危機」から国民の生命・安全を守るには、抑止力を不断に高める必要があります。
日米の紐帯(ちゅうたい)を強固なものとしながらも、米大統領選の帰趨(きすう)、米国の対日政策の変化もにらみ、憲法9条の改正をはじめ、「自分の国は自分で守る」体制の整備に取り組まねばなりません。これは主権国家として当然のことです。
その際、本欄でも何度か言及しましたが、日本への核攻撃も現実化しかねないことから、抑止力の抜本強化に向け、原子力潜水艦などの装備や敵基地攻撃能力の保有、自衛のための核装備などを進めるべきだと考えています。
--被爆国として、核保有には反対論も強いと思いますが
私たちも将来的には核廃絶を実現すべきだと訴えています。本年5月、オバマ米大統領が広島を訪問し、「核なき世界」への決意を表明しましたが、その理想自体に異を唱えるつもりはありません。しかし、中国・北朝鮮が核戦力を増強するなか、「核なき世界」のまえに、まずは独裁国家に「核を使わせない世界」をこそ目指すべきではないかと思うのです。この観点からは、米国の「核の先制不使用」構想は、抑止力の低下により中朝の増長を招き、地域の安定を脅かしかねないことを危惧します。
核保有国に囲まれている現状を冷静に見据え、広島、長崎の悲劇が二度と繰り返されることのないよう、国家防衛の意思をしっかりと示し、必要な手立てを講じなければなりません。
◇
【プロフィル】釈量子
しゃく・りょうこ 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。大手家庭紙メーカー勤務を経て、94年、宗教法人幸福の科学に入局。常務理事などを歴任。幸福実現党に入党後、女性局長などを経て、2013年7月より現職。
関連記事