子供だましの“マクワウリ作戦”の行方は… 不祥事オンパレードの韓国軍

 

【軍事ワールド】

 米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル」(THAAD)配備を巡って韓国が揺れている。ミサイルとセットで配備される探知レーダーによって中国上空の軍用機利用状況が詳細に判明するため、中国が大反対しているからだ。加えて配備が決まった地域の住民は「農作物がレーダーの電磁波で不作になる」などと反対デモを実施する始末。この状況を打開しようと、韓国軍は突飛な“作戦”を実施した。果たしてその「メロン作戦」の行方は…。(岡田敏彦)

 マクワウリの町

 韓国で「メロン」とはマクワウリのことを指す。マスクメロンなど“本物”のメロンは技術的に栽培が難しいうえ、朝鮮戦争後は長らく極貧状態にあった韓国の一般国民には、メロンなどというぜいたく品は全く縁がなかった。そんななかで安価なマクワウリをメロンと呼んできたという歴史がある。

 このマクワウリ(韓国名メロン)の韓国最大の産地が慶尚北道の星州(ソンジュ)郡という地域。米国がTHAADを配備しようとしている場所だ。

 韓国の「郡」は日本で町村規模とされ、星州郡は人口約4万6000人。その星州の目抜き通りにはいま、THAAD反対の横断幕が掲げられている。

 韓国国防省が7月13日にTHAADを星州郡に配備すると決定した直後の15日、黄教安(ファン・ギョアン)首相と韓民求(ハン・ミング)国防副長官が星州郡を訪れたが、韓国通信社の聯合ニュースなどによると、「予め申し上げられなかったことを恐縮している」と謝罪する2人に対し、怒り心頭の住民たちが生卵やペットボトルを投げつける事態に発展。

 配備決定から約1カ月経った7月23日にも大規模な反対集会が行われたほか、韓国KBSテレビによると30日には農民ら200人がマクワウリ畑をビニールハウスごと壊すパフォーマンスを行った。反対運動として一斉剃髪(スポーツ刈り)を行って最多人数の世界記録を狙うという、一寸理解しがたい運動もある。

 反対の理由は「電磁波」。住民たちは高性能レーダーの電磁波による健康被害の可能性を訴えるとともに、マクワウリなど野菜への被害を心配しているという。

 THAADのレーダーは空中を監視するもので、電波や電磁波は空へ向けて放たれる形だ。設置場所も住宅地や畑を眼下に見下ろす高台にある。そんな場所で「電磁波被害」とはかなりオカルトな話なのだが、韓国ではいったん広がった“迷信”はとどまるところを知らない。

 過去には、日本併合時代に測量のため設置した杭を「韓国を衰えさせようと日帝が地脈を分断するために刺した」などとして所構わず抜いて回ったあげく、まともな地図が作れなくなったという笑えない話がある。

 韓国国防省は「レーダーの出力は(既に配備されている)韓国軍の弾道弾早期警戒レーダーのグリーンパインより弱いレベル」と発表したが、住民のTHAADに対する警戒心は収まらなかった。そんななか、韓国軍が“秘策”を繰り出した。

 マクワウリ作戦

 韓国経済誌「ヘラルド経済」(電子版)によると、空軍軍需司令部は軍内部のサイトで「星州マクワウリ共同購入」を大募集。5キロ箱2万ウオン(約2000円)で1箱からOKだと購入希望を募った。

 また機密情報の漏洩を監視する国軍機務司令部では5キロ箱を200万ウオン(約20万円)分購入。空軍本部や合同参謀本部をはじめ他の空軍基地でも数十万円分を購入したとしている。さらに国防部では、ある次官が「直接行って買ってきた」とマクワウリを記者室に5箱置いて去っていったというのだ。

 軍としては、地元経済に貢献していることをアピールし、THAAD配備を認めてもらいたいというところだが、地元星州では「子供だましだ」と大反発が巻き起こった。

 「農作物を買ってやるから、黙って言うことを聞け」といった風に受け取られたようだ。

 信頼される軍とは

 そもそもTHAADは在韓米軍が配備する最新ミサイルシステムで、朝鮮半島に配備するとはいっても、韓国軍が運用に携わるわけではない。

 それでも配備場所の決定には一応、米韓の間で合意形成が成された。韓国国防部の柳済昇(リュ・ジェスン)国防政策室長は記者会見で、「韓米共同実務団が、THAADシステムの軍事的効果を最大化し、住民の安全を保障しつつ健康と環境に影響のない最適な配備先として星州を提案した」と伝えた。米国と韓国の共同決定で、運用は米軍が行うにもかかわらず、住民の矛先が韓国政府と韓国軍に向くのは理由がある。

 反発の底にあるのは、軍への不信感。北朝鮮と対峙しながら、最前線を担う軍を信頼していないのだ。実際、一昨年から続く大規模な軍の不正や不祥事はとどまるところを知らない。

 韓国KBSテレビなどによると、7月には環太平洋軍事訓練「リムパック」に参加した海軍の世宗大王艦がミサイル迎撃訓練を実施。戦闘機などを撃ち落とす自動迎撃モードで訓練を開始したところ、SM2艦対空ミサイル2発のうち1発は迎撃に成功したが、1発は標的を外れ爆発した。味方艦艇に向かって低高度を飛行する対艦ミサイルを迎撃するための手動射撃も実施したが、これも不発になったという。理由は整備不良や操作員のミスなどが推察されるが、日米などリムパック参加各国の目の前で「さまざまな技量未熟」を実証してしまった。

 また高性能ソナーを搭載すると称して安価な魚群探知機を搭載し、差額が軍関係者の懐へと消える汚職事件の舞台となった海軍の大型救難艦「統営艦」(3500トン・海軍作戦司令部第5戦団所属)でも新たな不祥事が持ち上がった。

 韓国のニュースサイト・ニューデイリーが7月26日に報じたところでは、今年4月、未婚の副士官の男女が「艦内の奥まった隔室で性的関係をもったことがわかった」というのだ。軍では「副士官の品位維持違反でそれぞれ減給処分が下された」と説明したというが、統営艦は魚群探知機を装備したおかげで韓国国民から「税金でマグロ漁船を作った」などと批判されたばかり。今度は漁船化どころかラブホテル化の不祥事というわけだ。4月には北朝鮮の5回目の核実験の動きが高まっていたこともあり、批判も当然ではある。

 さらに陸軍では、ライフル銃とグレネードランチャーを一体化した「K-11小銃」の“再設計”が決まった。つまりこれまでの量産品は不良品で使えないと軍が公式に認めたのだ。

 同様の銃は米軍でも研究開発されたが、信頼性の面などから本格開発には至っていない。そんな高性能火器を、大砲をつくればひび割れる冶金レベルの韓国で開発、大量生産にチャレンジしていたのだが、果敢な挑戦は裏目に出た。

 これまでにも20mm空中爆発弾が高出力電磁波を受けると爆発する▽ヘルメットなどの留め具の磁石による磁力で勝手に弾が発射される▽現行のK-2小銃(3・1キロ)の2倍以上(約6・6キロ)の重さで携帯が不便▽空中爆発弾が威力不足-といった問題が判明していたが、今年に入って射撃統制装置に亀裂ができる現象が発見され、再設計が不可避になった。不良品の空中爆発弾だけで15万発製造しており、計240億ウオンがゴミになる可能性もある。

 こんな不祥事のオンパレードでは、国民の信を得られるわけがない。積もり積もった不信を「マクワウリ」で懐柔しようとする軍の作戦は“視界不明瞭”のようだ。