外国人技能実習制度、日本で審議遅れ 介護士目指す越若者、道半ばで断念も
今春にも外国人技能実習制度を使って日本で介護の仕事を始める予定だったベトナムの若者たちが、日本の国会での新法案審議がずれ込んだため、人生設計の変更を強いられている。準備のため通っていた日本語学校を退学、介護の仕事自体を断念した人も。日本で資格を取得し介護士として活躍する夢を描いた若者が翻弄されている。
「田舎に帰って結婚しろ」。4月にハノイの日本語学校を退学したドー・ティ・ハンさんは、北部ビンフック省に住む親から、実家に戻るよう言われている。外国人が報酬を得ながら技能を学ぶ外国人技能実習制度による訪日を目指していたが、今はレストランで働きながら独学で日本語の勉強を続けている。
日本の介護人材不足を背景に、技能実習に「介護」の職種を加える制度改正に向けた「外国人技能実習適正実施法案」を、日本政府は昨年3月に閣議決定し、国会で審議入りした。
故郷で看護師として働いていたハンさんは「もうすぐ日本で法律ができる」と人材派遣会社に勧誘され、昨年8月にハノイの日本語学校に入学。今年4月以降、奈良県の高齢者介護施設で働く予定だった。しかし、安全保障関連法案の審議などに時間がかかり、法案は継続審議となった。
計画通りの渡航が不可能になったハンさんは「農業を営む親にいつまでも負担を掛けられない」と、語学力などの条件がより厳しい経済連携協定(EPA)の枠組みで訪日、介護士資格取得を目指すことにした。
ハンさんとともに実習生を志した日本語学校の同級生8人のうち2人は介護職を諦め、技能実習制度で日本の食品加工会社などで働いている。
やはり介護実習生を目指したファム・アイン・グエットさんも学校を辞め、ハノイの別のレストランで働く。「日本で介護士の資格が取れれば、日本でもベトナムでも仕事ができる」。実習生としての渡航の見通しが立たないため、自分で学費を負担する語学留学で訪日し、日本語と介護を学ぶことに決めた。
初年度の学費と3カ月分の住居費計約90万円は兄が工面する。ベトナムの工場労働者の一般的な年収の4倍以上に当たる大金。「それ以降にかかるお金は、他の留学生と同じように授業の合間に働いて稼ぐつもり」
技能実習制度をめぐっては劣悪な労働環境や低賃金などの問題点が指摘されているが、訪日を目指したベトナム人の若者は数千人に上るとみられる。日本の国会審議が滞ったことで大半が渡航を断念した可能性がある。
厚生労働省によると、新法は早ければ秋の臨時国会で成立する見通しだが、介護職受け入れが始まる時期はまだ決まっていない。(ハノイ 共同)
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【用語解説】外国人技能実習制度
発展途上国への技能移転を目的に、途上国の若者を日本国内の企業などで受け入れ、働いてもらう制度。1993年導入。2015年末の実習生は約19万人。中国が最多で、近年はベトナム人が急増。一部職場での低賃金、過酷な労働条件などが問題視されているほか「国内中小企業の人手不足を補う手段となっており、制度の趣旨と懸け離れている」と指摘されている。(ハノイ 共同)
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