日銀のETF買いは株式市場を破壊する

高論卓説

 ■ゾンビ企業も買い支え? 株価乱高下も

 日銀は21日の金融政策決定会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」策の導入を決めた。新聞、テレビなどが詳細を多く伝えた。中身は割愛しよう。筆者が注目したのは同時に発表された「ETF(上場投資信託)の銘柄別の買い入れ限度にかかる見直しについて」である。ETFの買い入れ額年間6兆円は変わらないが、買い入れるETFの種類の比重を変えるというのだ。

 日銀が買い入れてきたのは日経平均株価、JPX日経400、TOPIX(東証株価指数)の3株価指数に連動したETFである。これまでは日経平均連動型が多かった。今後はTOPIX連動型の買い入れを大幅に増やすというのが見直しの骨子だ。指数算出の対象銘柄は日経平均なら225社、JPX日経400なら400社、TOPIXは東証第1部に上場する1977社だ(9月21日現在)。ETF買いとは“玉”と“石”が交じる銘柄群をまんべんなく買うことを意味する。TOPIX連動型は“石”の交じり具合が他の2株価指数に比べ格段に多い。

 株式投資の基本は個々の企業の成長性、業績動向などを調べること。日銀のETF買いは信託銀行経由で投資の基本が抜けている。株式市場は本来「成長企業を発掘し、優劣を判定する」「成長企業に良質な長期資金を供給し、日本経済の成長を促す」といった機能を備える。TOPIX連動型ETFを大幅に買い増す日銀の姿勢はゾンビ企業の温存を許す中国政府・共産党の考え方に通じるところがある。株式相場を下支え、押し上げたいがためかと穿(うが)ちたくなる。株高で景況感が好転し、消費意欲が刺激されるとでもいうのだろうか。

 日銀は9月10日現在、日本株を10兆5000億円余り(ETFが88%)保有している。東証1部の時価総額510兆円余の約2%にあたる。今後もETFを年間6兆円買い続ければ、日銀の日本株持ち株比率は毎年、約1%のペースで上昇する。個々にみると、既に日銀が実質的な大株主になった企業が続出していると報じられた。日銀の動きはコーポレートガバナンス・コード(企業統治の規範)、日本版スチュワードシップ・コード(責任ある機関投資家の諸原則)にも抵触しかねない。

 コーポレートガバナンス・コードの補充原則の中には、「政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する方針を開示すべきである(抜粋)」との記述がある。しかし、中央銀行の日銀は方針を開示しない。スチュワードシップ・コードは機関投資家なら投資先企業の企業価値を高めるため、投資先企業の経営モニタリング、議決権行使の方針と行使結果の公表などをすべきだと説く。機関投資家ではない日銀にとって、スチュワードシップ・コードの理念と精神は無縁なのだろうか。

 「日銀の大量保有銘柄は避けろ」。海外の日本株ファンドの間でこんな声が多く上がり始めたと聞く。「日銀のETF買い増しで日経平均は1000~2000円上がる」などとはしゃいでいる時ではない。日銀のETF買いが続けば浮動株は枯渇し、売買が成立しにくくなる。日銀が市場を闊歩(かっぽ)する“官製相場”は乱高下を招く。出口が見えない日銀のETF買いは株式市場の機能の低下と、破壊をもたらしかねない。

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【プロフィル】加藤隆一

 かとう・りゅういち 経済ジャーナリスト 早大卒。日本経済新聞記者、日経QUICKニュース編集委員などを経て2010年からフリー。67歳。東京都出身。