稲田防衛相講演「網タイツやめた」「日本を守る防衛政策」「韓国入国拒否…残念」
「言論テレビ」4周年
ジャーナリストの櫻井よしこ氏が主宰するインターネット番組「言論テレビ」の放送4周年を祝う集会が25日、都内で開かれ、稲田朋美防衛相が講演した。稲田氏は核実験を強行した北朝鮮や南シナ海で力による現状変更を試みる中国を国際社会と連携してルールに従わせる必要があると主張。一方で、防衛政策の基本は「日本自身の防衛力をしっかりとつくっていくことだ」とも話し、質・量ともに防衛力を強化していく考えを示した。講演の詳報は以下の通り。
◇
櫻井先生にはずっと応援をしていただいて、姉と妹のような関係です。どっちが姉かはわかりませんが、すごくよくしていただいています。特に2回目の選挙は厳しい選挙でしたが、(民主党の)詐欺ともいうべきマニフェストで政権をかすめ取られました。厳しい2回目の選挙の折には、櫻井先生がパンツ姿で福井に来られ、街頭演説もしていただきました。
こんなことは他ではしておられないのに、そういうこともしていただいて、無事、2回目の選挙も当選することができました。また、政権を取り戻し、行政改革、公務員制度改革担当大臣になったとき、公務員制度改革という難しい改革を進めなければなりませんでしたが、この時も「言論テレビ」に出させていただき、後押しをしてもらいました。
内閣人事局という霞ケ関に横串を刺す形での人事を行う組織を、これはなかなかできなかった改革でしたが、後押しをしていただきました。そういう意味で、大変頼りにもしているし、心配もいただいております。今日のこのスーツは櫻井先生にプレゼントしていただいたものです。私のトレードマークはメガネと網タイツですが、網タイツは防衛大臣になってからやめました。メガネだけは福井のメガネということで、百田(尚樹)先生も同じ時期にメガネのベストドレッサー賞をいただいた仲間です。
そんなわけで頑張っていますが、政調会から行革担当大臣、政調会長そして防衛大臣ということで、第2次安倍内閣で政権を取り戻してからずっと走り続けてきました。行革担当大臣になったときも驚きましたが、政調会長になったときも驚きました。
自民党の中で、政調会長はすごく楽しかったです。党には活気があります。役所の中は官僚が多いですが、党はみんな政治家で一国一城の主。それぞれ個性のある人たちの集まりの中で、そこでいろんな議論をしてまとめていくというのは、ものすごくダイナミックでした。
政調会長の職にあると、自分がこういうことをやりたいという会議体をつくることができます。自民党60年の折には歴史の本部を立ち上げて、谷垣(前)幹事長に本部長になっていただきました。歴史の問題、東京裁判史観にとらわれることなく、何が客観的事実かということを、第一線のみなさんに来ていただいて、しっかりと歴史を学んでいく。客観的事実に基づいた歴史認識があってはじめて、何を反省し、何を将来に生かすことができるかを政治家が学ぶことはとても重要です。
私は防衛大臣に就任しました。実は予期していたわけではなく、政調会長の時代はずっとアベノミクス、経済成長をやっていました。そして、規制改革担当大臣もやり、規制改革は成長戦略の核ですが、今の日本に求められているのは、労働市場改革、産業改革、人材育成。この3つを一度に、難しい改革だけれども、大きな改革をするときです。そんなに時間は残されていません。この大きな改革を党の側からやっていきたいという思いがとても強かったのですが、そういう頭で参院選も戦ってきたので、防衛大臣といわれたときは「えっ」という気持ちもありました。
考えてみれば、櫻井先生が言われたように、第1次安倍内閣は1年間の内閣でしたが、重要なことをたくさんやりました。その中の1つが防衛庁を省にすることです。それから、憲法改正に必要な国民投票。その国民投票をやるための法律がなかった。その法律をつくったのは第1次安倍政権です。それから教育基本法の改正、これもずっと自民党がやりたくてなかなかできなかったものですが、この教育基本法も、これまた占領期にできたもので、教育基本法を改正するという大きなことをやったのも第1次安倍政権でした。
そういう意味で、防衛大臣に就任して、その責任の重さを毎日痛感しています。まだ、2カ月しかたっていませんが、毎日が緊張の連続で、実はすごく長く感じています。
いよいよ明日から国会ですが、この臨時国会のターゲットは防衛大臣だといわれています。しっかり脇をしめて、国会に臨みたいと思います。
7月の参院選で27年ぶりに自民党が参院の過半数を取りました。世間的には大勝したということですが、政調会長として参院選を戦い、楽な選挙ではなかったし、大勝した選挙でもありませんでした。実は1人区は厳しい戦いでした。特に東北など農業県では苦戦を強いられました。
1人区で苦戦した大きな要因は民進党が共産党と組んだことです。今回、蓮舫代表になってどういう方針になるのか注目したいです。しかし、民進党が共産党と組んだことは民進党にとって決していいことではありません。私は民進党は政権を取り戻す資格を失ったと思っています。共産党はいまだに自衛隊は憲法違反だと公言しています。政調会長の時代にいろんな討論会に出ましたが。そこで共産党の代表は自衛隊は憲法違反だと言い切りました。政調会長のNHK討論の中では、共産党の代表は防衛費を人殺しの予算だと言いました。
「それを撤回しなさい」とみんなで言ったけれども、その番組の中で、撤回はしませんでした。民進党の(当時の)政調会長は、あの青い服を着た人ですが、それを否定しませんでした。民進党が共産党と組んだことで、民進党は政権を担う資格を失ったと思っています。
8月に防衛関係の概算要求をしましたが、過去最大となっています。日本を取り巻く環境をみたとき、「人殺しの予算だから減らせ」とか、「こんなに(予算を)つけて」とか(批判をする人がいるが)、果たしてどうやってこの国を守っていくつもりなのでしょうか。批判をするのであれば、対案を出すべきだと思います。
自衛隊の国民の支持率は92・2%で、9割を超える国民が自衛隊に対してよい印象を持っています。これは本当にありがたいことだし、自衛隊が国民から愛される自衛隊であり続けることが重要です。私自身、防衛大臣になって、いろんな活動を視察しました。昨日、一昨日は沖縄に行ってきました。自衛隊はいろんな厳しい訓練もやり、世界のどの国の軍隊よりも規律という意味ですばらしいものがあります。一生懸命訓練をしている自衛隊のみなさんの姿をもっともっと国民にもアピールをしていくことが必要だと思っています。
日本を取り巻く安全保障環境は大変厳しいものがあります。例えばここにいらっしゃる人は危機感を共有していると思いますが、そういう危機感を国民全体で共有することが重要です。
北朝鮮は今年に入って核実験を2回やりました。これまでも核実験をやってきましたが、3、4年(間隔を)空けてきました。ミサイルは21発日本の近海に着水させています。その技術はどんどん上がってきています。北朝鮮は先軍主義で、国民の生活ではなく、軍事に重きを置く政治のもとで、どんどん軍事費を使い、どんどん技術を上げているのです。
ミサイルはTELといって、可動式になっており、わかりにくいところから、わかりにくい時間帯に、いつでも、どこでも、選んだ時間に弾道ミサイルを発射できる技術をつけています。それから、潜水艦からもミサイルを発射できるようになりました。先日は3発の弾道ミサイルをほぼ同時に、ほぼ同じ場所に着水させました。日本の排他的経済水域に着水させています。潜水艦から撃てるというのは、兆候をなかなか見つけにくい。そうした国が日本海を隔てて、すぐそこにあるということ。日本の同胞を多数拉致し、帰そうともしない国です。核実験をし、ミサイルを発射し、そこを率いているのが30そこそこの若い指導者で、何をするか予測が不可能となっています。その国が日本のすぐそこにあるという現実を見据えた上で、日本を守るという防衛政策を立てていかなければいけません。
今回の概算要求で重点を置いているのは、弾道ミサイル防衛です。イージス艦から高い所で撃ち落とす。それから低い所でのPAC3。イージス艦を展開させ、ミサイルを撃ち落とす対応能力を向上させていくことが重要です。イージス艦の能力、PAC3の対処能力、これらを向上させていく。イージス艦も増やしていきます。
今、中期防衛計画、それからさらに大きな戦略があって、それに基づいて毎年概算要求をし、予算を編成して、防衛力をつけていっています。一方、私が政調会長のときにこだわっていた日本の財政再建もしっかりやっていかなければいけません。社会保障改革もやっていかなければいけません。経済成長に資するための対策も打っていかないといけません。その中で、防衛予算を効率的に組み、弾道ミサイル防衛もやっていかないといけないということです。
非常に厳しい状況の中で日本の防衛をやっているんだということを理解していただきたいと思います。
北朝鮮の技術の進化、そして中国。中国は後から話しますが、中国の戦略。そのスピード感の中で、今の態勢で大丈夫かということを不断に検証していくことが、日本の防衛をあずかるものとして必要です。それを国民全体で共有していくことも重要だと思います。
私が国会議員になったのは約11年前。そのときと比べて中国の防衛費は3倍を超えています。そして今や日本の防衛費の3・7倍になっています。
中国の法ではなく、力による現状変更。現状を変更して、それが新しい状態なんだという戦略。南シナ海がそうですが、どんどん埋め立てて人工の島をつくり、そこに滑走路や軍事施設をつくっています。
そして、フィリピンと中国との間で仲裁裁判が起き、その裁判ではフィリピンの主張を認めて、中国の主張はほぼ退けられました。中国は結局、その法的な手続きに入ってきませんでした。これは中国にとって決していいことではなかったと思います。管轄権の意義をいうのであれば、しっかりと法的な手続きの中で、管轄権の意義をいうべきであって、法的手続きに入らずに、判決が出てから文句を言うのはおかしいと思います。
仲裁の判決が出ても、中国はそれはごみくずと同様だとして、現状変更を続けています。それは南シナ海のこと、それは遠い向こうのことだから日本には関係がないと考えるのは、違います。南シナ海で起こっていることが、東シナ海で起ころうとしているのです。それは力による現状変更です。
国際法ではなくて、力による現状変更の試みを阻止しなければならない。これは日米が、日米韓が、関係諸国も協力することにより、力による現状変更ではなくて、国際法のルールを貫徹させるんだということを発信していかなければいけません。
こういうことを言うと、「稲田さん韓国に入国拒否されたじゃない」という人がいますが、本当に入国拒否されたわけです。あれは残念でした。あれは竹島に行こうとしたわけではなくて、自民党の野党時代、党の方針で鬱陵島にある竹島の記念館視察に行こうとした途端、残念ながら入国を拒否されたのです。なぜ拒否されたかというと、私が韓国の公共の安全を害する恐れのある人間だということで、テロリストといわれたわけです。こんなかわいらしいテロリストがいるのかと言いたいところですが、私が慰安婦の問題や歴史認識の問題について、ずっと発言してきたことも事実です。
この前、ワシントンで講演したときに質問が出ました。「大臣は歴史認識の問題について発言をしてきましたね。それで韓国とうまくやっていけるんでしょうか」と。私は歴史認識の問題は客観的事実が全てだと思っています。客観的事実が何かということを検証することが重要で、事実と違うことについては違うということが私の歴史に対する向き合い方なんです。
北朝鮮のミサイルに核実験の脅威。私は日米だけでなく、日米韓と、しっかりと協力をしていくことが重要だと思っています。そういう意味でGSOMIA(防衛秘密を交換する際の手続きを定めた軍事情報包括保護協定)は早い時期に締結をしたいと思います。
核実験の後に韓国の防衛長官と電話で会談をしましたが、共通の認識というのは確認することができたと思います。そういう意味で、日米の強化、そして、関係諸国との強化によって、中国の現状変更について、しっかりと発信をしていく必要があります。
3年前に中国は防空識別圏を設定しました。日本も防空識別圏を設定していますが、普通はそれを設定して、そしてそこに入ってきたときに、確認をするということなのですが、中国の場合は、一方的に定めたルールで、従わないときには防衛的な緊急の措置を行うという一方的な宣言をしていて、これは明らかに国際ルールに違反をしています。
しかし、そういう力による現状変更に対しては、屈することなく私たちはしっかりと自分の国、領土、領海、領空をしっかり守っていくし、航海の自由など、しっかり態度で示していきます。こういうことをいうと、「稲田大臣は過激なことを」と言われますが、何にも過激ではない。当たり前のことです。
中国に対してもドアは常にオープンであるし、戦略的な海空連絡メカニズムのようなことはしっかりと合意をしていく必要があると思います。中国にとっても、力ではなくて、ルールを守ることが中国の利益にもなるということを、みんなで発信していくことがとても重要です。
改めてですが、防衛政策には3つの基本があります。1つ目は日本自身の防衛力をしっかりとつくっていくこと。防衛力の量と質、これを確保していきます。今の日本を取り巻く現状をしっかりと見極めた上で、常に検証していくことが重要です。
2つ目は日米同盟の強化です。これは平和安全法制、特定秘密、新しいガイドラインの3つが成立したことによって、日米の同盟は非常に強くなりました。防衛大臣としてワシントンでカーター長官にもお会いしましたが、大変信頼できる力強い人。共通認識というか、共通するものを感じました。
日米の同盟は非常に強化されています。民進党は平和安全法制を廃止すると言っていますが、平和安全法制を廃止して、どうやってこの国を守るのでしょうか。
平和安全法制で集団的自衛権の一部行使を認めたわけですが、これは憲法にも違反していないし、立憲主義にも反していません。このことを特に、女性のみなさまにしっかりと平和安全法制を改めて、説明したいと思います。安倍政権は怖いことをやっている、徴兵制になるといった、そういうことではないということをしっかり説明していきたいです。
ここにいらっしゃるみなさんは百も承知だと思いますが、憲法9条ができたのは占領下。憲法9条ができたときには、自衛権を行使できないというのが政府の解釈でした。攻めてこられたら、白旗をあげるというのが政府の解釈でした。その解釈を変えたのが1954年。9条のもとでも自衛権を行使できることに政府の解釈が変わりました。これが9条の歴史の中で、最も大きな解釈の変更でした。
そして、9条のもとで認められているのは、必要最小限度の自衛権で、今もそうです。自分の国を守る必要最小限度の自衛権は9条のもとでも主権国家だから認められると解釈が変わったのが1954年です。そして唯一の判決である砂川判決もそれにのっとって、自衛隊を合憲だとしました。
問題は、必要最小限度の自衛権の行使の範囲がどの範囲かということです。日本を取り巻く現状の中で、ごく一部の集団的自衛権、すなわち、公海上で、領海ではなく、近海の公海上で米国の艦船が攻撃を受けたとき、そのときに集団的自衛権の行使ができる。そうしないと日本が危ないという非常に厳しい条件のもとで、集団的自衛権の行使を認めるのは、何ら憲法に違反するものでも、立憲主義に反するものでも、唯一の最高裁判決に違反するものでもないということを断言しておきます。
また、自衛隊法を改正して、例えば日本と米国が共同訓練をして、日本を守るための活動をしているときに、米国の艦船が攻撃された場合、今までの自衛隊法では、自分の船しか守れませんでした。隣で撃たれていても見殺しにするしかなかった。それを武器が使用できるようにしました。当たり前のことですが、それによって日米同盟が強くなったのです。
3つ目は、関係諸国との連携の推進。価値観を共有する国々、そして近隣の国々。これは韓国もそうです。中国とも本当はできることは海空連絡メカニズムのようにしっかりとやっていくべきです。決して中国を敵視しているということではありません。できる協力はしっかりとやっていきます。
そういったことを進めていくことで、力ではなく、法の支配を貫徹させる。今回の国会でTPPも大きな課題となっています。私は野党時代、TPPには反対し、TPP反対議連の幹事長として、反対署名を集めていました。それは民主党政権のように、全く外交戦略のないところで、あのように難しいTPP交渉は絶対に無理だという意識があったからです。
野党時代に何を守るかを決めて、TPP交渉に入り、大筋合意がなされて、国内手続きが日本では、この臨時国会が大きな山場になります。これはしっかりやっていくことが必要で、確かに米国はトランプさんもクリントンさんもTPPに対して批判的ですが、日本はしっかり国益を守った交渉をしました。例えば農産物だったら、関税は20%は守っているわけです。他の国はみんな98、99(%)は撤廃している中で、日本が一番守っているのです。
そして何より、TPPはまさしく経済における東アジア太平洋地域の法のルールを確立することになります。経済と安全保障は両輪です。どっちか1つだけやればいいということではない。安倍首相もいつも言っています。経済最優先と。経済と安全保障、そして東アジア太平洋地域に経済においても、法のルールを貫徹させる。そのためのTPPなのです。
憲法については、安倍首相も歴史的なチャレンジと言っておられます。今、政府の立場にありますから、法治国家日本の基本法の一番重要な憲法の議論は、国権の最高機関である国会で、しっかりとやっていただきたいと思います。
関連記事