バングラ、縫製工場以外も監査 火災事故受け、労働者の安全確保急ぐ

 

 バングラデシュは、10日に首都ダッカの北方、トンギの包装工場で発生した大規模火災事故を受け、国内で稼働する縫製業以外の工場の安全監査が実施される見通しだ。トンギの火災事故では22日までに少なくとも35人が死亡、70人が負傷したもようだ。現地紙デーリー・スターが報じた。

 同国は、2013年にダッカで複数の縫製工場が稼働するラナ・プラザビルが崩壊し、1036人が死亡した事故が発生して以降、衣料品製造など縫製業の工場の安全監査を強化してきた。これまでに外国の2監査機関が縫製工場2000カ所を監査したのをはじめ、バングラデシュ政府も国際労働機関(ILO)と協力して2000カ所の監査を進めている。

 ラナ・プラザ崩壊事故後に発足した政府の工場・施設監査局(DIFE)の幹部は「トンギの火災事故は大きな教訓になる」と述べ、縫製業以外の工場でも監査を実施する必要があるとの認識を示した。老朽化している工場も多くあり、早急に労働者の安全を確保しなくてはならないとの考えだ。

 ただし、監査は縫製工場だけで手一杯なのが現状で、縫製業以外の工場については手が回らない状況だという。同幹部は対象となる工場がいくつあるか即答できないとしたうえで、外国機関の協力が引き続き得られるかといった問題もあると指摘。監査開始時期については「可能な限り早く」と話すにとどめた。

 また、同幹部によると、監査費用はバングラデシュ政府が負担する予定だが、縫製工場の場合は1カ所当たりの予備監査だけで7000ドル(約71万円)が必要とされており、費用は多額に上る見通しだ。

 さらに、トンギの火災事故では当局の体制の問題も明らかとなった。事故原因は調査中だが、ボイラーの爆発があったとされている。同国の制度上、ボイラーは原則として年に1度の検査義務があるにもかかわらず、全国で公式に登録されているボイラー5500機に対して検査官は6人しかいないため、検査が不十分だった可能性がある。

 平日はデスクワークがあるため、休日返上でボイラー点検に当たっているという検査担当の責任者は、今年2月に産業省に対して350人の増員を求めたと主張。人手不足が解消されれば検査作業の消化も順調になると述べた。

 デーリー・スターによると、バングラデシュでは05年以降に12件の大規模な工場事故が発生した。欧米市場などで製造国の労働者の安全環境を重視する傾向が強まるなか、大規模な事故が続けば投資家の信頼が揺らぎかねない。工場の安全確保は政府にとって重要な経済課題でもあるといえそうだ。(ニューデリー支局)