配偶者控除 年収要件の上積み焦点に 150万円前後で検討

 

 政府・与党が2017年度税制改正で検討する配偶者控除の見直し案で、適用を受ける妻の年収要件を現行の103万円以下からどう上積みするかの線引きが焦点になっている。150万円前後に引き上げる方向で検討するが、高所得の世帯主を対象から外すなどして必要な財源を確保する必要がある。衆院解散・総選挙が取り沙汰される中、高所得者などを意識して、所得制限を導入できなければ、単なる「パート減税」となる懸念もある。

 自民、公明両党は来週にも配偶者控除見直しの本格的な議論を開始し、12月までに制度設計を行う。

 配偶者控除は、妻の年収が103万円以下なら夫の課税所得から38万円を差し引ける仕組み。ただ、パートで働く女性らが「103万円の壁」を意識し、働く時間を減らす問題が指摘されていた。そこで、パート女性らが労働時間を増やす余地を広げようと、年収要件を150万円前後まで引き上げることを検討する。

 この検討案に、日本総研の山田久調査部長は「大局観がない」と指摘する。引き上げられた年収要件が新たな壁になる構造は変わらない。年収130万円以上で年金など社会保険料の支払いが発生する“壁”もあり、女性の就労拡大は限定的との見方もある。

 一方で、年収要件を緩和すれば対象が増えて税収は減る。そこで、財源確保を目的に、夫(世帯主)の年収が1000万円前後を超える世帯を対象外とする案が浮上している。

 もっとも、世帯主への所得制限という“増税”に踏み切れるかどうかは見通せない。そもそも、配偶者控除の見直しでは、妻の収入を問わずに適用する「夫婦控除」の導入が有力だった。しかし、その場合、負担増の世帯が出るため、政府・与党は総選挙などをにらみ、17年度税制改正で見送る方向になった。

 仮に、選挙を意識し、世帯主への所得制限を設けず、妻の年収要件を引き上げることになれば、年収103万円超から150万円程度までの主婦が対象の「パート減税」になりかねない。財務省内には「それなら見直し自体やらない方がまし」と、現行制度を維持する案も浮上している。

 政府・与党は、女性の社会進出や格差の解消など、時代に即した抜本的な税制改革を掲げていた。

 柱の一つである配偶者控除見直しが付け焼き刃で終われば、安倍晋三政権の「働き方改革」も腰砕けになったとの印象がぬぐえなくなる。(万福博之)

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 ■想定される配偶者控除の見直し案

 (上から)配偶者(妻)の年収要件、世帯主(夫)の年収要件、特徴

 【現行】

 103万円以下

 なし

 ・妻が年収103万円を超えないよう労働を抑制

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 【見直し案(1)】

 150万円以下

 1000万円以下

 ・女性の労働を促進

 ・夫の年収が高いと増税になる世帯も

                   ◇

 【見直し案(2)】

 150万円以下

 なし

 ・女性の労働を促進

 ・財源なく実質「減税」に