中国、経済減速も“ゾンビ”淘汰不可避 鉄鋼過剰生産の「元凶」

 

 鉄鋼の過剰生産能力問題が深刻さを増す中、中国政府は欧米などから「元凶」とされるゾンビ企業の淘汰(とうた)を強く求められてきた。今回、東北特殊鋼集団の破綻を容認したことで、改めて淘汰を積極的に進めていくことを内外に示した格好だ。もっとも、淘汰が一気に進めば失業者があふれ、減速気味の経済がさらに冷え込むことになり、今後は難しいかじ取りを迫られる。

 中国は鉄鋼やセメント、石炭など幅広い産業で過剰な能力を抱える。なかでも鉄鋼は、ゾンビ企業の比率が5割を超えているともいわれる。これまでこうした企業が減らなかったのは、地方政府が失業者の大量発生を恐れ、中央政府の意向に反発してきたためだ。

 日本総合研究所の三浦有史上席主任研究員は「(淘汰で)短期的には雇用問題が顕在化し、中国景気の下押し圧力が強まるだろう」と予測する。中国への輸出依存度が高い国なども打撃を受け、世界経済リスクになりかねない。

 だが、ゾンビ企業の淘汰は避けて通れない問題だ。

 鉄鋼では、自国景気の減速に直面した中国メーカーが投げ売り同然の安値で鋼材を輸出し、市況を暴落させてきた。このため世界中のメーカーが業績を悪化させ、欧米などが保護主義的な動きを強めている。こうした状態を正常化するには中国の過剰能力を減らすしかない。ゾンビ企業の淘汰で生産性が高まり、経営体力が上向けば、中国にとってもプラスにはたらく。

 三浦上席主任研究員は「(中国政府は)短期的なマイナスを避けつつ、できるだけ早いスピードで淘汰を進めなければならない」と強調する。(井田通人)