プノンペン、都市化順調なら世帯所得3倍 30年にバンコク並みか
カンボジアの首都プノンペンの世帯平均所得が14年後の2030年にはフィリピンのマニラやタイのバンコク並みになる-。こんな将来像を英エコノミスト・グループが打ち出した。同グループは、調査予測を盛り込んだ報告書「ASEANの都市」を発表。それによると、都市化が順調に進めば、プノンペンの世帯所得の中央値は14年後には約3倍に伸びるという。ただ、未整備のインフラや環境対策、政治情勢など成長を阻む不安定要因も少なくない。報告書は「どの都市にも、適切なマネジメントスキルが必要とされている」と指摘している。
◆大きな「伸びしろ」
エコノミスト・グループの研究機関であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の都市を対象に、収入や経済活動、人口動態などを基に、30年の各都市を予測。ASEANの経済成長のカギを握るのは、人口50万以上の都市部の安定的な成長であるととした。
都市部といっても、実際の人口規模や特徴にはばらつきがある。この報告書では、人口50万以上の地域を都市部としており、ジャカルタのような人口1000万超の巨大都市、500万から1000万の大都市(クアラルンプールなど)、100万から500万の中都市(ヤンゴンなど)、50万から100万の小都市(ビエンチャンなど)に分類した。
ASEANの都市の大半は中・小都市に分類されるが、人口の半分がこれら都市部に住んでいるという。
都市部への人口集中の高さは、全人口が都市部に住む「都市国家」シンガポールをトップに、77%が都市部に住むブルネイ、75%のマレーシア、54%のインドネシア、51%のタイ、44%のフィリピンと続く。
その中でカンボジアの都市部人口は最も低く、全人口の21%に過ぎない。ラオスの39%、ミャンマーの34%、ベトナムの34%をも下回っている。カンボジアは毎年7%前後の経済成長が続いているとはいえ、地方と首都の格差が大きく、プノンペン以外にはほとんど都市がみられないことが背景にある。
しかし、これは逆に地方の都市化や人口移動に大きな「伸びしろ」があるともいえる状態だ。報告書は、プノンペンの30年の人口を240万と予測、現在の1.4倍に増えるとした。10カ国の最大都市の人口増加率予測では、ビエンチャンの1.6倍に次ぐ数値だ。
また、15年のプノンペンの世帯別収入の中央値を1万900ドル(約113万円)と推定、さらに30年には3万2300ドルにまで伸びると予測した。15万7300ドルのシンガポールには及ばないものの、2位のクアラルンプール(4万7000ドル)に次ぐ3位に上昇し、マニラ(3万200ドル)、バンコク(2万7700ドル)を上回るとの予測だ。ただ、この報告書の予測についてはプノンペンの範囲をどのようにとらえているかが不透明、あるいは物価や生活水準が違うことをどう考慮したのかなど、疑問視する指摘も出ている。
◆スタバに行列
とはいえ、プノンペン中心部に限れば、報告書が予測するような勢いのある消費力の向上は確かに見られる。
たとえば、高級感で顧客を引き寄せる米カフェチェーン大手「スターバックス・コーヒー」が本格的に上陸した。昨年12月に、プノンペン国際空港に初めてオープン、今年5月にはイオンモール・プノンペンに出店、10月初旬には高級住宅街のバンケンコン地区に3店舗目をオープンした。この素早い展開は、高まる需要の手応えを感じたからだ。価格はアイスラテのグランデで税込み約4ドルと、地場カフェのコーヒー代の約1.5~2倍だ。それでも店内は連日、カンボジア人の若者たちで満席に近く、注文カウンターには長い列ができる。
また、日本の焼肉チェーン「牛角」も10月、バンケンコン地区に初進出した。中間所得者層から富裕層を狙う価格帯で、ランチの単品でも6ドル前後から。牛角に限らず、プノンペン中心部のレストランでは、ランチの価格が5ドルを切ることは珍しくなっている。また顧客ターゲットは、在住外国人よりも、利用単価が高いカンボジア人だ。
高価格帯の飲食店が繁盛しているのは、カンボジアの景気がいいだけでなく、消費スタイルの変化も大きい。プノンペンではサービス産業が種類も企業数も増大し、カンボジア人の給与所得者が増えた。貯蓄や保険はまだ十分に浸透していないが、給与所得者であれば、住宅や車、バイク、家電製品など大型の買い物でローンを使えるようになった。その分、飲食やファッションなどに使える金額が上がった。
一方でプノンペンには、建築ブームのコンドミニアム(高級マンション)やオフィスビルの需給バランスに対する懸念、交通渋滞の悪化、ごみ処理や洪水対策など、都市化に伴う課題も山積している。18年の国民議会選挙に向け、与野党の対立が深刻化していることも、安定的な成長には懸念材料だ。(カンボジア月刊邦字誌「プノン」編集長 木村文)
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