アフリカのタンザニアで見た中国の脅威 ビル建設も安値で次々と受注

新興国に翔ける

 □スパイダー・イニシアティブ代表 森辺一樹

 最近、タンザニア最大の都市、ダルエスサラームを訪れる機会があった。タンザニアはアフリカにおいては経済が比較的発展している国だ。それでも、インドネシアの国内総生産(GDP)が8600億ドル(約89兆5260億円)であのに対して、タンザニアは450億ドルで、およそ19分の1に過ぎない。インドネシアと比べると発展の度合いはそれほど高くないことがわかる。

 日本企業は現在、インドネシアをはじめとした東南アジア諸国連合(ASEAN)各国に注力している。一方で、アフリカには既に多くの中国企業が参入し、ビジネスを展開している。

 これから豊かになっていけるかどうかという状況にあるアフリカでは、消費者向けビジネスよりも、インフラ事業を中心にビジネスが展開されている。そんな中で特に目についたのが、中国の建設会社の躍進だ。

 タンザニアに到着して空港から車で最大都市ダルエスサラームに入って最初に驚いたのが、街並みが20年前の中国と同じような印象を受けたことだ。

 一般的に、ビルの構造や外観には国によって特徴があるものだが、ダルエスサラームの街並みはひと昔前の中国そのものだった。

 調べてみると、案の定、多くのビルの建設会社は中国企業だということがわかった。ほとんどのビルは、現地で一から設計したのではなく、過去に中国で建設したことのあるビルの設計を流用したようだ。まるで、均質化したコモディティ製品を量産するかのごとく、遠いアフリカの地で次から次にビルを建てる中国企業には、正直、驚きを隠せなかった。

 国にとって非常に重要なインフラ事業は、日本でも国に保護され、他国の建設会社が参入することは容易ではない。にもかかわらず、中国企業がタンザニアで圧倒的な存在感を発揮しているのは「現地に求められる品質のビルを安く造っている」からにほかならない。

 日本の建設会社のアジア新興国事業展開が進まない最大要因は、品質とコストのバランスだ。「日本ならではの高度な建設技術や安全基準」を売りにしても、アジア新興国では入札で勝てず、それならばと材料や設計、施工を安くするためにコストを削っていけば、当然、「日本の安全基準」がクリアできない。

 ほとんどのアジア新興国は「コストは高いが、最高の安全基準を確保したビル」よりも「なるべくコストをかけずに、最低限の安全基準が確保されたビル」を求める。日本企業は「いかに自分たちの基準ではなく、現地の人々の基準でビルを造るか」ができずに撤退を余儀なくされ、それをやってのけたのが中国企業というわけだ。

 この流れは、まさに家電と同じではないか。日本製は高品質・高機能だけれど価格は高い。一方で、中国メーカーは、最低限の品質と機能で低価格が特徴だ。結局、消費者は後者を求め、日本は世界最大の家電メーカーの座を中国に譲り渡した。

 しかしながら、日本企業が海外で成功を収めた例も忘れてはならない。中国政府の依頼を受けて、森ビルが上海に建設した複合都市「上海環球金融中心」は記憶に新しい。まさに森ビルの都市づくりのノウハウを注ぎ込んだ、彼らにしか造れないドリームプロダクトだといえよう。予算が豊富な国においては、こうした「日本クオリティ」が生きることも往々にしてあるのだ。

 中国のように、コモディティ化されたビルをどんどん建てるか、日本クオリティを追求してドリームプロダクトを造り出すか。日本の建設会社は、岐路に立たされているといえるだろう。

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【プロフィル】森辺一樹

 もりべ・かずき 海外販路構築のスペシャリスト。10年以上にわたり1000社以上の海外展開の支援実績を持つ。アジア新興国市場の販路構築が専門。海外市場開拓コンサルタントの第一人者として活躍中。“アジアで売る”ためのノウハウをネットラジオで無料配信中! www.spyderagent.com/podcast

 >>森辺氏のツイッターは @kazukimoribe