官製景気でバブル 崩壊懸念も 潜む3つの落とし穴とは
中国GDP【上海=河崎真澄】景気の減速感が強まる中国で7~9月期の経済成長率が下振れしなかったのは、国有企業に利益が偏在している公共投資の拡大と、不動産市場へのテコ入れ策が支えた形だ。「官製景気」の色彩が濃く、いびつな経済成長がもたらしたバブル崩壊の懸念も取り沙汰される。
「実需に投資目的が重なった不動産市況の過熱による資産インフレが大きな要因」。岡三証券の上海駐在チーフエコノミストである後藤好美氏は成長率が維持されたことについて、こう指摘する。7~9月期の住宅販売面積は前年同期比で27・1%増。住宅販売額は不動産相場の急騰を背景に43・2%も伸びた。
中国国家統計局の盛来運報道官は「年初来の好調な住宅販売が建材、家具や家電など幅広い個人消費につながった」と述べ、不動産市場の活況が幅広い効果を生んだと強調した。
成長数字の維持は、2020年までに10年実績比で国内総生産(GDP)と世帯所得を倍増させるとの中国共産党の公約実現と政権安定に必要不可欠な戦略だが、「そこに3つの落とし穴が潜む」(上海の大手銀行幹部)との声もある。
まず「資金流動性の落とし穴」。中国人民銀行(中央銀行)の利下げなど金融緩和で、14年秋を底に不動産市況が好転。株安を受けて投資資金が一気に不動産市場に戻った結果、今年春から住宅バブルの色彩を濃くした。不動産への依存度が高まるほど、市況の下落局面では成長基盤はになる。懸念される住宅バブル崩壊が中国経済そのものに大打撃を与えそうだ。
次に「人民元安の落とし穴」。人民元は10月1日に国際通貨基金(IMF)の仮想通貨である特別引き出し権(SDR)に正式に組み込まれたが、国慶節(建国記念日)連休明けの10日以降、中国当局は元の買い支えは不要になるとの思惑も強まり、市場では元売りドル買いがなお優勢だ。
一方で元安の輸出への恩恵は限定的。米国の利上げ観測もあり、元安を嫌った海外への資本流出や外貨準備高の減少傾向が中国経済をむしばむ恐れがある。
そして「権力闘争の落とし穴」もある。共産党が重要人事を決める5年に1度の党大会を来年に控え、党や政府、国有企業で「人事の季節」が始まった。国有企業の構造改革を含む経済政策の立案や実施などは停滞気味。習近平国家主席と李克強首相の間で火花が散る権力闘争が、経済政策のブレにつながっている。
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