タイ、すし屋台拡大「庶民の味」に フランチャイズ展開、低価格実現
日本食ブームのタイで、にぎりずしの屋台が人気を広げている。フランチャイズ展開が進み、食材を大量に仕入れるルートができたことで低価格が実現。すしのイメージは高級料理から「庶民の味」に変わりつつある。
首都バンコク中心部に近い中低所得者層が多く住む地区。平日の夕方に市場を訪れると、タイ料理の屋台が軒を連ねる一角にすし屋台があった。男性店長のエックさんがクーラーボックスからネタを取り出しその場ですしを一つ一つ握っている。
サーモン、タコ、カニ風味かまぼこ-。すしは気温約30度の屋外に常温で並べられ、どれも1個5バーツ(約15円)。食べてみると、酢飯の味は薄めでネタの生ぬるさが口に広がった。
客の女性会社員、ピンパーさんは「週2回はここで買う。すしは高級なイメージがあったけれど、屋台ができてから気軽に楽しめるようになった」と笑顔だ。
ホテルのレストランで日本食などの料理人をしていたエックさんは昨年8月に退職、屋台を開いた。「仕事帰りに買って帰る人で連日にぎわい、客足は順調」と話す。1日の売り上げは平均約1200個で、もうけは約1800バーツという。
エックさんは、自分の名前を冠した屋台のフランチャイズ展開も始めた。全国に50店ほどあり、各店の従業員に調理方法を指導したり安い仕入れ先を教えたりしている。
タイでは近年、日本食ブームが起き、日本貿易振興機構(ジェトロ)などによると、屋台を除く日本料理店だけで約2700店ある。すしの人気も急上昇したが、日本料理店では値が張り外国人や裕福なタイ人が主な客層だった。
しかし、現地紙によると、すし屋台をフランチャイズ経営する会社が20以上誕生し物流ルートを開拓。市場や加工工場から大量の仕入れが可能になり、手頃な値段ですしを提供できるようになった。地方の町にも屋台が広がっているという。
エックさんとは別のフランチャイズを手掛ける女性経営者、スナンさんは「すしは健康に良く、庶民からも注目されている。有望なビジネスだ」と期待を口にした。(バンコク 共同)
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